第63章 藤原三郎は本当に優しい(1)

トーテム個室内:

香坂悠生は黒田真一の言葉を聞いて、唇の端を引き、苦い笑みを浮かべた。

「兄貴、彼女の前では、プライドも志も、俺にはまったくないんだ。」

黒田真一は目を細め、長い指でテーブルの上のワイングラスを持ち上げ、優雅に一口飲んでから言った。「機会があれば、その彼女が誰なのか見てみたいものだ。お前をここまで魅了する魔力を持つとは。」

香坂悠生の口元に苦い笑みが浮かび、しばらくしてからグラスの赤ワインを一気に飲み干した。

「ああ、兄貴、4年前、俺には何もなかった。彼女はお金のために俺から去った。今、俺は戻ってきた。彼女を取り戻すんだ...彼女が何を望もうと、俺はすべて与えられる。たとえそれがお金でも...」

香坂悠生は心の中で思わず呪いの言葉を吐いた。自分はなんて下劣なんだ。