第82章 黒田奥様はとても心配(1)

黒田グループ、設計部：

西村绘里は朝、設計部から出かけた時はまだ元気だったのに、午後に戻ってきたときには、少し足を引きずっていて、新しいシャネルのパンツに履き替えていた。

わずか半日の間に、まさに大惨事だった。

矢崎凌空は二、三の設計案件を間もなく獲得する見込みで、とても鼻高々になっており、事あるごとに難癖をつけてきた。西村绘里はできる限り見て見ぬふりをしていた。

内線が鳴り、西村绘里は素早く電話に出た。

「もしもし、設計部の西村绘里です。」

「私だ。」

男性の馴染みのある低い声が電話の向こうから聞こえ、西村绘里の瞳が一瞬驚いた後、すぐに平静を取り戻した。

「黒田社長！」

「さっき香坂家の香坂社長から電話があった。香坂新館の設計案件を君に任せるそうだ。」

西村绘里は黒田真一の言葉を聞いて、その場で固まってしまった。

香坂悠生、彼は自分を侮辱しに来たのだろうか？

西村绘里は手の中の受話器を握りしめ、かすれた声で言った。「社長、私にはその任務を果たせるか心配です。」

「悠生と私の関係は知っているだろう、つまり君の義理の弟だ。君は黒田グループで最も優秀なデザイナーだ。元々、香坂家の設計案件は君を推薦しようと思っていた。君以外に適任者はいないからね。」

西村绘里は黒田真一の言葉の中の「義理の弟」という三文字に、頭皮がぞくぞくした。

「はい。」

黒田真一の言葉の裏にある深い意味は、西村绘里が考えるまでもなく理解できた。香坂新館の案件は大きな仕事で、矢崎凌空のいわゆる数千万の契約よりもずっと価値がある。

自分が香坂家の設計案件を獲得できれば、主任の座を競う上でより有利になるだろう。

今後、香坂悠生とビジネス上の関わりを持つことを考えると、西村绘里は気分が悪くなった。

「社長、他に用がなければ、切らせていただきます。」

「西村绘里、君は以前から悠生を知っていたな。」

西村绘里：「……」

男性の言葉は疑問ではなく、確信だった。

西村绘里は息を詰まらせ、しばらくしてから自分の声を取り戻した。

「社長、どうしてそのようなことを？」

「悠生は何十億もの案件を新人に簡単に任せたりはしない。君を信頼しているか、あるいは……」

「私たちは以前、同級生でした。普通の同級生関係です……それだけです。」