第102章 私はあなたの唾液を気にしない(1)

黒田真一は眉を上げて西村絵里の翡翠のような小さな顔を見た。彼女は怒りで顔を赤らめ、薄い唇を引き締めていた。

美人は玉のようで、言葉にできないほど魅力的だった。

「どうした、怒ったのか?」

西村絵里は黒田真一の何気ない言葉を聞いた。彼の一挙手一投足には気品があり、全身から王者の気迫が隠せなかった。

もし「はい」と言えば、結果はもっと深刻になるだろう。

あれこれ考えた末、西村絵里は我慢した……

自分が怖気づいたわけではなく、相手が強すぎるのだ。

相手が厚顔無恥なら、自分もそれに倣うわけにはいかない。

「そんなことありませんよ、黒田社長のために味見してあげます」

そう言って、西村絵里は口元に甘い笑みを浮かべたが、その笑顔は目には届かなかった。彼女は黒田真一の前に座り、箸を取って目の前のハマグリを味わった。