第103章 私はあなたの唾液を気にしない(2)

西村絵里は多少不安を感じていたので、客室に入るとすぐにドアをしっかりと施錠した。

自分は本当に騙されてしまったのだ。

男の心は測り知れないもので、自分は男に引っ張られるままになるべきではなかった。しかし相手が黒田真一となると、西村絵里はどうしても抵抗できなかった。

特に視線が偶然、自分が噛んで傷つけた彼の唇に落ちると、いつも心の中に何か異様な感覚が走った。

以前なら背筋を伸ばし、自分の行いは正しく、座り方も正しいと思えていた。

今は…

少し後ろめたさを感じていた。

自分と黒田真一の関係は、確かに普通の社員と上司の関係を超えていた。

……

清潔なベッド、かすかなミントの香りがとても心地よかった。

客室とはいえ、マッサージバスタブが備え付けられ、すべての欧風家具は輸入素材で作られていた。