第126章 キスが押し寄せる1更(2)

西村絵里は甘奈をあやして寝かしつけた後、浴室に入って疲れを洗い流した。

リビングに出て髪を乾かそうとしたとき、思いがけずドアをノックする音が聞こえた。

西村絵里は美しい瞳を見開いた。こんな遅くに、もしかして藤原海翔だろうか?

今日は老人の誕生日だったから、海翔は当然藤原家に泊まるはずだろう?

誰だろう?

西村絵里はドアに向かって歩き、少し開けて外を見ると、目の前に立つ男性を見て表情が変わった。

男性のハンサムな顔立ち、深い海のような瞳に、彼女は隠れる場所がなかった。

黒田真一だった……

西村絵里は反射的にドアを閉めようとしたが、男性が鉄の腕を伸ばして彼女の動きを阻止するのを見た。

「黒田奥さん、私を中に招かないのですか?」

黒田真一の深い黒い瞳が西村絵里の柔らかく白い顔に落ちた。髪は乱れ、まだ水滴が垂れていて、どうやら風呂上がりのようだった。彼女はピンク色のパジャマを着ていて、とても柔らかく美しく見えた。

西村絵里:「……」

男性の瞳は深遠で、言葉は低く、まるで天の音楽のようだった。

西村絵里は再び心の奥底から抑えきれないほど激しく震えた。

どうして入れることができるだろう……

甘奈がまだ家にいる。

リビングには、自分と甘奈の写真がたくさん飾ってある。

もし黒田真一が入ってきたら、すべてが台無しになってしまう。

黒田真一が知ったら、自分が父親になっていたことを。

おそらく……

「だめ……リビングが散らかっているから、また今度にして。」

黒田真一は眉をひそめ、西村絵里の動揺をすべて見透かしていた。

完全に後ろめたいことをしている様子だった。

「ん?」

ドアはもう閉められず、膠着状態になり、西村絵里は慌てて言った。「私が…私が外に出るわ。」

そう言うと、西村絵里は自分が薄いパジャマしか着ていないことも気にせず、急いで黒田真一の大きな手を引っ張って男性を部屋の外に押し出し、自分も一緒に出て、そしてドアを閉めた。

その切迫した行動が、ますます疑念を抱かせた。

「西村絵里、部屋に誰かいるのか?」

「そう……ルームシェアの人よ、あまり都合が良くないの。彼女は私が普通の社員だと思っていて、あなたとの関係を知らないの。」

西村絵里は隠し通せないことを知っていたので、半分だけ認めた。