第150章 夫婦の情趣求首訂(22)

「黒田真一、あなたの勝ちね……」

黒田真一が車を発進させると、後続の車もようやくエンジンをかけ始めたが、誰も不満を漏らさなかった。

西村絵里は隣に座る男を見つめ、思わず皮肉を言った。「天下を手中に収めて、黒田真一、私のような孤児一人を押さえつけて、面白いの?」

「うん……悪くない感じだ」

黒田真一は手にしていた婚前契約書を西村絵里に手渡した。彼女はそれを宝物のように受け取り、素早く自分の横に置くと、目の前の男を警戒しながら大事そうに扱った。

黒田真一は彼女のそんな仕草に、細い目をさらに細めた。

「西村絵里、私が言いたいことは単純だ……私が欲しいものは手段を選ばず、あるいはどんな代償を払ってでも、必ず手に入れる。わかったか?」

西村絵里は黒田真一の言葉に、心臓が妙にドキドキと鳴り続けた。

「それに、どんな代償を払ってでも、誰も私を止められない……婚前契約書があるからといって安心するな。私が望めば、この婚前契約書など、ただの無意味な紙切れにすることもできるんだ」

西村絵里:「……」

黒田真一は自分の能力と実力を警告しているのだ。彼女には少しも抵抗できないということを。

「黒田真一、あなた……法律というものを少しは尊重できないの?」

「仙台市では、私が法律だ。私はここにいる。何か問題でもあるのか?」

西村絵里:「……」

ない、黒田真一の勝ち……西村絵里の顔色が青ざめた。

黒田真一を前にすると、彼女は完全に抵抗する力を失っていた。ただ惨めに敗北するだけだった。

しばらくして、西村絵里は先に抵抗を諦め、かすれた声で言った。「黒田真一、結局あなたは何がしたいの?」

「簡単なことだ。引っ越して一緒に住め」

西村絵里:「……」

不可能……

もし自分が黒田真一と一緒に住んだら、甘奈はどうなるの?西村絵里は唇を噛んだ。絶対に妥協するわけにはいかなかった。

「不可能よ」

「うん、君がそう言うと思っていた……西村絵里、私には十分な力がある。君に「可能」と言わせることができる力が」

西村絵里:「……」

黒田真一、彼の勝ちだ……

「黒田真一、あなたは……私が処女かどうかも気にしないの?」

男性が最も気にすることだが、西村絵里はわざと触れたわけではなかった。

「非常に気にする」