第145章 夫婦の情趣求首訂(17)

西村絵里は小さな手を握りしめ、もう黒田家に留まりたくないと思った。唇を噛み、静かに言った。「もう遅いわ、真一、黒田グループに行く時間じゃない?」

言い終わると、西村絵里は口元を緩め、甘く微笑んだ。黒田真一は黒い瞳を細め、絵里の言葉を聞いて、視線を少し離れた場所にいる香坂悠生に向けた。

「悠生、香坂新館の設計案はずっとお前の義姉さんが担当しているんだ。何か質問があるか?もしあるなら、一緒に黒田グループに来てもいいぞ」

香坂悠生:「……」

愛の披露……もう十分見せつけられた。もう十分だ、必要ない。香坂悠生は口元に無理やり笑みを浮かべ、最後に首を振った。

「兄さん、大丈夫です……義姉さん、少しお話ししたいことがあるんですが……今、よろしいでしょうか?」

西村絵里は香坂悠生の少し痛みを含んだ声を聞いて、なぜか悲しい気持ちになった。黒田真一の平然とした様子を見ながらも、彼の大きな手が自分の小さな手をつかみ、無意識に力を込めているのを感じた。