第171章 黒田奥様は妊娠した2更(5)

「いいえ」

西村絵里は手の中のものを捨てようとしたが、矢崎凌空に聞かれたら説明できないと心配した。

結局、矢崎凌空のような人なら、物がなくなれば必ず騒ぎ立てて返せと言ってくるだろう……

こういう人が一番嫌だ。

西村絵里は美しい瞳を少し顰め、これをどうしたらいいのだろう?

……

黒田真一が車内に座ると、西村絵里が眉を曇らせている様子が目に入り、薄い唇を引き締めた。

「どうしたの?」

「何でもないわ」

西村絵里は口角をわずかに引きつらせた。矢崎凌空が裏で黒田真一と寝る方法を話し合っていたなんて、言えるわけがない。

こういう女同士の揉め事は。

西村絵里は黒田真一に頼って一緒に争うつもりはなかった。

それに……

矢崎凌空のような人には、西村絵里はそもそも注意を払いたくなかった。

結局、意味がないから。

「ふむ」

黒田真一は少し落ち着かない様子の西村絵里をさっと見て、彼女が握りしめている手に視線を落とし、一瞬考え込んだ。

小さな瓶のようだ。

正体不明の小瓶。

西村絵里が何を持っているのかわからない。

「何か持っているなら、村上秘書、後でハンドバッグを用意してくれ」

「はい、黒田社長」

村上秘書は運転中だったが、すぐに電話をかけ、最新のハンドバッグを藤原家に届けるよう手配した。

黒田社長は、西村さんにますます優しくなっている。

西村絵里は黒田真一の言葉を聞いて、少しほっとした。

そうでなければ、携帯もなく、小瓶を手に持ったままでは確かに不便だ。

「ありがとうございます、黒田社長」

「うん……」

黒田真一の視線が西村絵里の優しい顔に落ち、薄い唇を引き締めた。

「西村絵里、子供は好き?」

西村絵里:「……」

黒田真一の突然の質問に、西村絵里は美しい瞳を見開き、一瞬反応できなかった。

黒田真一がなぜ突然この質問をするのかわからなかった。

「好きよ」

「子供たちは考え方が純粋だから。時には泣いたり、可愛らしく振る舞ったり、甘えたりする。一番たまらないのは、時々大人のように理屈を言ったり、自分の小さな世界を持っていて、好きな人もいるところ」

西村絵里は完全に甘奈のことを話していた。

甘奈の考えについては、当然よく理解していた。

可愛らしく振る舞い、さらにはTfboyとEXOを全部自分の彼氏にすると言ったりする。