西村絵里は黒田真一の厚かましさに出会うたびに、どう返答すればいいのか分からなくなる。
ならず者に道理を説いても、通じるはずがない。
自分もならず者のような気分になってしまう。
しばらくして、空気が少し気まずくなり、西村絵里は黒田真一の手にまだ握られている矢崎凌空の薬瓶を見て、口元をゆがめた。
「もう遅いから、先に休みます...黒田社長、私は寝相がいいので、あなたも...そうであることを願います」
言い終わると、西村絵里は非常に真剣に小さな手を伸ばし、大きなベッドを二分して、お互いにラインを越えないようにと示した。
黒田真一は眉をひそめ、西村絵里がこのように自分を警戒している様子を見て、細長い黒い瞳を少し細め、真剣に頷いた。
「うん、でも、黒田奥さん、私が気になるのは、女性が黒田さんと寝たいと思っているのに、なぜあなたはそんなに無関心なのかということです」
西村絵里:「...」
「寝る」という言葉が黒田真一の口から出ると、あまりにも色っぽく聞こえる。
それに...
多かれ少なかれ、黒田真一は自分を何だと思っているのだろう。
ホストか何か?
誰とでも寝られるとでも?
西村絵里は少し混乱し、黒田真一が真剣に言っているのを見て、口元をゆがめた。
「私は...無関心ではありません、もしかして...私も参加して欲しいとでも?」
「黒田社長...すみません、私はそんなに変態趣味はありません。そういうことに関しては、黒田社長の方が経験豊富で、私にはありません」
西村絵里は見事に四両千金の技を使い、黒田真一の言葉を直接打ち返した。
黒田真一は黒い瞳を細め、西村絵里の言葉を聞いて、再び口角を上げた。
自分の奥さんは、まるで甘奈のように、口が達者で、とても可愛い。
うん、女性がこんな風だと、本当に愛らしい。
「黒田社長、もう遅いので、先に休みます」
西村絵里は黒田真一からどんな反応があるかを期待せず、激しく鼓動する心を抑えながら、大きなベッドの方へ歩いていった。
黒田真一は目を細め、西村絵里が大きなベッドに向かって歩いていくのを見て、薄い唇を少し曲げた。
うん...
西村絵里が笑う姿、口達者に唇を尖らせる姿は、甘奈にそっくりだ。
なぜか、自分はいつも無意識のうちに西村絵里と甘奈を結びつけてしまう...
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