西村絵里:「……」
男性にそう聞かれると、西村絵里はすぐに口を開いた。「虫垂炎のせいで……それに、あの時は家に問題があって、あなたは後で調べたでしょう」
「それに、虫垂炎のことは、私……会社に入った最初の頃に、話したはずです」
西村絵里が思わず口にすればするほど、黒田真一は眉を寄せた。
西村絵里の反応があまりにも大きすぎたからだ。
黒田真一は腕の中の女性を見つめ、その視線はさらに深くなった。
「うん……」
誰にでも小さな秘密がある。西村絵里が話したくないなら、自分からも詮索するべきではない。
適切な時期が来れば、西村絵里は自分から話してくれるだろう。
西村絵里は頭上に男性の熱い息が吹きかかるのを感じ、心が乱れた。
もし黒田真一がいつか甘奈の存在を知ったら、どうなるのだろう。