第210章 黒田奥様が黒田さんを一晩中予約する2更(8)

ふん、そんなことさせるものか。

「みんな、ちゃんと仕事しなさいよ。勤務時間中に何をしているの?これは黒田社長のプライベートな問題よ。あなたたち一人一人がとやかく言う立場じゃないでしょ」

矢崎凌空の怒鳴り声に、皆はすぐに散り散りになった。

みんな心の中ではわかっていた。

矢崎凌空が嫉妬しているのだろう。

黒田奥さんになりたくて気が狂いそうなのだ。

でも黒田奥さんはもう妊娠しているのに……

この矢崎凌空は、どんなに狂ったように望んでも、ただの妄想でしかない。本当に狂った女だ。

「ふん、あなたたち一人一人の考えていることが分からないとでも思ってるの?みんな黒田奥さんになりたいんでしょ、黒田社長を誘惑したいんでしょ。何を考えているの?枝に飛び乗って鳳凰になるなんて、あなたたちのような平凡な人間にできることじゃないわ。わかった?」

西村绘里:「……」

西村绘里は自分のデスクに戻っても、まだ矢崎凌空の罵声が聞こえてきた。口元をゆがめ、嘲笑的な表情を浮かべた。

泥棒が泥棒を捕まえろと叫ぶようなものだ。

自分が泥棒なのに、他人も皆泥棒だと思い込んでいる。

こういう人間は、往々にして最も恐ろしい。

まさに矢崎凌空のような人間だ。

西村绘里は矢崎凌空を無視することにして、自分のデザイン図に集中した。香坂新館のデザイン案は大きなプロジェクトで、彼女は以前に外観のデザイン図だけを提出していたが、内部構造を含め、多くの要素を改めて慎重に構築する必要があった。

……

矢崎凌空は一声怒鳴ったものの、皆が全く興味を示さず、自分を相手にしないことに気づき、急に面目を失ったように感じた。不機嫌そうに続けて言った。

「今は実績だけで主任の座を競えると思って、私を軽く見ているんじゃないわよ。言っておくけど、デザイン部に私、矢崎凌空がいる限り、私が仕切るのよ……だって私は……山口……」

あと少しで山口琴子の名前を叫びそうになったが、矢崎凌空はすぐに声を収めた。視線を冷静な表情の西村绘里に向け、不機嫌そうに前に出て言った。「西村绘里、私のオフィスに来なさい。話があるわ」

西村绘里:「……」

くそ、この狂った女、また自分に絡んできた。