西村絵里:「……」
無視。
西村絵里は聞こえなかったふりをして、ほとんど逃げるように事務所を出た。
黒田真一……
厚かましい。
……
黒田真一は慌てて逃げる西村絵里の姿を見つめ、薄い唇がかすかに上がった。おそらく西村絵里だけが、自分をこんなにもソワソワさせるのだろう。
しかし、それも西村絵里だからこそ。
彼女には十分な時間を与えよう、網を張り巡らせるために……
強制的に、しかも一瞬で決着をつけるのでは、あまりにも面白みがない。
黒田真一は薄い唇を引き締め、黒い瞳に魅惑的な光が走った。
うん……
西村絵里が自分に次々と驚きを与えてくれることを期待している。
自分が欲しい女性を、飼いならしたいわけではないが、自分の保護の輪から外れてほしくもない。
黒田真一が考え込んでいる時、プライベートの携帯が鳴った。見知らぬ番号からだった。