第217章 私のパパになってくれない?1更求訂(6)

西村絵里:「……」

無視。

西村絵里は聞こえなかったふりをして、ほとんど逃げるように事務所を出た。

黒田真一……

厚かましい。

……

黒田真一は慌てて逃げる西村絵里の姿を見つめ、薄い唇がかすかに上がった。おそらく西村絵里だけが、自分をこんなにもソワソワさせるのだろう。

しかし、それも西村絵里だからこそ。

彼女には十分な時間を与えよう、網を張り巡らせるために……

強制的に、しかも一瞬で決着をつけるのでは、あまりにも面白みがない。

黒田真一は薄い唇を引き締め、黒い瞳に魅惑的な光が走った。

うん……

西村絵里が自分に次々と驚きを与えてくれることを期待している。

自分が欲しい女性を、飼いならしたいわけではないが、自分の保護の輪から外れてほしくもない。

黒田真一が考え込んでいる時、プライベートの携帯が鳴った。見知らぬ番号からだった。

黒田真一は眉をひそめ、すぐに電話に出た。

「おじさん、私だよ」

黒田真一はそれを聞いて、薄い唇が思わず上がった。

甘奈……

「どうして新しい番号から電話してきたの?」

「うーん、おじさん、これは先生の電話なの。はぁ……お昼休みの時間に、すごくあなたに会いたくなっちゃって……」

黒田真一はそれを聞いて、黒い瞳が少し温かくなった。

うん、毎日小さな女の子に思われ、想われる、その感覚は悪くない。

「ああ」

「もう、本当のこと言うね。うーん……さっき明くんがまた私にパパがいないって言ったの。だから、先生から電話を借りて、パパに電話すると言ったんだけど、私には電話する人がいないから、あなたに電話するしかなかったの」

黒田真一:「……」

元気だった少女の声から、黒田真一は彼女の落胆をはっきりと感じ取った。

どこか哀れで、涙をこらえた強さがそこにあった。

黒田真一はそれを聞いて、心が強く締め付けられるような痛みを感じた。

「へへへ、おじさん、今廊下で電話してるんだよ。みんなはベッドで寝てるの。今みんな私がパパに電話してるのを見たら、きっと私にパパがいると信じてくれるよね。それで、後でみんなに自慢してもいい?」

黒田真一は甘奈の言葉に含まれる恐る恐るとした様子を感じ取り、胸が痛んだ。

「もちろんいいよ……」

パパのそばにいない子供。