西村絵里は藤原海翔の言葉を聞いて、美しい瞳を瞬かせ、その後少し不自然な表情を浮かべた。
うーん……
確かに父親の役割が必要だ。
世界中がそう自分に告げている。
でも、自分だって甘奈にそのような存在を与えたいと思っているのに。
問題は、あの時の男のことを、自分も知らないということだ。
……
藤原海翔と西村絵里はまず甘奈を幼稚園に送った。
幼稚園の前に着くと、西村絵里と藤原海翔はそれぞれ甘奈の手を引いて幼稚園へ向かった。
「甘奈!」
少し離れたところにいた明くんは甘奈の姿を見つけると、興奮して叫んだ。
西村絵里はその声の方向を見た。
あれは明くんじゃない?
昨日、甘奈にパパがいないと言ったのは明くんで、それで甘奈はあのおじさんに電話したんだ。
明くんのことは西村絵里も知っていた。甘奈のことが大好きな男の子だ。