第230章 黒田社長が甘宝幼稚園へ1更求訂(1)

西村絵里は甘奈を抱きしめたまま、一晩ぐっすり眠った。

翌朝目を覚ますと、自分の胸元が濡れていることに気づき、思わず苦笑した。

しかし小さな女の子は全く気にせず、小さな手で西村絵里を抱きしめ、離そうとしなかった。

西村絵里は口元を緩め、身を屈めて少女の唇にキスをした。

「甘奈、お嬢ちゃん、おはよう……起きる時間よ」

「うーん、ママ、音楽かけて」

「いいわよ」

西村絵里はスマホを取り出し、慣れた手つきで音楽リストから甘奈のお気に入りの曲を見つけた。

私について来て、左手、右手でスローモーション、右手左手でスローモーションリプレイ、この歌があなたに幸せを、あなたは私を好きになった?

馴染みのあるメロディが流れ始めると、まだ眠そうだった甘奈はすぐに元気になった。

西村絵里は思わず笑った。甘奈を起こすのは自分ではなく、いつも…

彼女の大好きなアイドルなのだ。

そう思うと、西村絵里はあからさまに嫉妬してしまった。

うーん…

気分良くないわ。

……

西村絵里は甘奈に豪華な朝食を用意した後、バスルームに入り、簡単にシャワーを浴びた。昨夜、甘奈の涎で胸元がびしょ濡れになっていたからだ。

バスルームから出ると、藤原三郎がすでにきちんとした服装で、甘奈と一緒に楽しそうに朝食を食べているのが見えた。

楽しく会話をしながら。

まるで他人の家にいるという意識が全くない。

「絵里ちゃん、君の朝食は本当に美味しいね」

西村絵里:「……」

厚かましいわね。

西村絵里は不機嫌そうに藤原三郎を一瞥し、彼が自分の椀の小米のお粥を食べているのを見て、リビングに向かい、自分用にもう一杯よそった。

朝食を終えた後、西村絵里は甘奈の髪を編もうとしたが、藤原三郎にそれを阻止された。

「絵里ちゃん……昨夜一晩中練習したんだ、チャンスをくれよ」

西村絵里:「……」

西村絵里は最初断るつもりだったが、藤原海翔が真剣な様子を見て、口角をピクリと動かした。

「いいわよ、藤原三郎、私の娘を台無しにしないでよね」

「問題ない……髪型なんて飾りさ、うちの甘奈ちゃんは雰囲気で勝負するんだから」

西村絵里:「……」

西村絵里は藤原海翔が不器用に甘奈のポニーテールを結ぶのを見ていた。本来なら極めて簡単なことなのに、男性の手にかかるとまるで天に登るように難しくなっていた。