西村絵里は甘奈を抱きしめたまま、一晩ぐっすり眠った。
翌朝目を覚ますと、自分の胸元が濡れていることに気づき、思わず苦笑した。
しかし小さな女の子は全く気にせず、小さな手で西村絵里を抱きしめ、離そうとしなかった。
西村絵里は口元を緩め、身を屈めて少女の唇にキスをした。
「甘奈、お嬢ちゃん、おはよう……起きる時間よ」
「うーん、ママ、音楽かけて」
「いいわよ」
西村絵里はスマホを取り出し、慣れた手つきで音楽リストから甘奈のお気に入りの曲を見つけた。
私について来て、左手、右手でスローモーション、右手左手でスローモーションリプレイ、この歌があなたに幸せを、あなたは私を好きになった?
馴染みのあるメロディが流れ始めると、まだ眠そうだった甘奈はすぐに元気になった。
西村絵里は思わず笑った。甘奈を起こすのは自分ではなく、いつも…
彼女の大好きなアイドルなのだ。
そう思うと、西村絵里はあからさまに嫉妬してしまった。
うーん…
気分良くないわ。
……
西村絵里は甘奈に豪華な朝食を用意した後、バスルームに入り、簡単にシャワーを浴びた。昨夜、甘奈の涎で胸元がびしょ濡れになっていたからだ。
バスルームから出ると、藤原三郎がすでにきちんとした服装で、甘奈と一緒に楽しそうに朝食を食べているのが見えた。
楽しく会話をしながら。
まるで他人の家にいるという意識が全くない。
「絵里ちゃん、君の朝食は本当に美味しいね」
西村絵里:「……」
厚かましいわね。
西村絵里は不機嫌そうに藤原三郎を一瞥し、彼が自分の椀の小米のお粥を食べているのを見て、リビングに向かい、自分用にもう一杯よそった。
朝食を終えた後、西村絵里は甘奈の髪を編もうとしたが、藤原三郎にそれを阻止された。
「絵里ちゃん……昨夜一晩中練習したんだ、チャンスをくれよ」
西村絵里:「……」
西村絵里は最初断るつもりだったが、藤原海翔が真剣な様子を見て、口角をピクリと動かした。
「いいわよ、藤原三郎、私の娘を台無しにしないでよね」
「問題ない……髪型なんて飾りさ、うちの甘奈ちゃんは雰囲気で勝負するんだから」
西村絵里:「……」
西村絵里は藤原海翔が不器用に甘奈のポニーテールを結ぶのを見ていた。本来なら極めて簡単なことなのに、男性の手にかかるとまるで天に登るように難しくなっていた。