西村絵里は甘奈を抱きしめたまま、一晩ぐっすり眠った。
翌朝目を覚ますと、自分の胸元が濡れていることに気づき、思わず苦笑した。
しかし小さな女の子は全く気にせず、小さな手で西村絵里を抱きしめ、離そうとしなかった。
西村絵里は口元を緩め、身を屈めて少女の唇にキスをした。
「甘奈、お嬢ちゃん、おはよう……起きる時間よ」
「うーん、ママ、音楽かけて」
「いいわよ」
西村絵里はスマホを取り出し、慣れた手つきで音楽リストから甘奈のお気に入りの曲を見つけた。
私について来て、左手、右手でスローモーション、右手左手でスローモーションリプレイ、この歌があなたに幸せを、あなたは私を好きになった?
馴染みのあるメロディが流れ始めると、まだ眠そうだった甘奈はすぐに元気になった。
西村絵里は思わず笑った。甘奈を起こすのは自分ではなく、いつも…