第242章 黒田奥様を壁ドン2更(3)

「うん。」

黒田真一はそっけなく返事をし、口元にかすかに皮肉な笑みを浮かべた。

この矢崎凌空は山口琴子の目となり、本当に責任を果たしているようだ。

西村絵里!

黒田真一は薄い唇を引き締めた。

実力で言えば、西村絵里は間違いなく矢崎凌空より上だ。ただ、手段は矢崎凌空ほど多くない。西村絵里ができないわけではなく、そもそも彼女がそういうことを軽蔑しているからだ。

……

西村絵里はデザイン部に来ると、すぐに煩雑な仕事に取り掛かった。

矢崎凌空と受注数を比べると、今の自分の業績総額は矢崎凌空に大きく差をつけられている。

黒田真一は数だけを計算していて、利益額は計算していないため、たとえ香坂家が大きなデザイン案件だとしても、自分に計上されるのは1件としてしか数えられない。

今や矢崎凌空は明らかに自分を押さえつけようとしていて、会社の上層部の承認が必要ない多くの小さなプロジェクトを全て自分の名義で引き受けている。

問題は……

もし本当に実力で引き受けているなら、西村絵里も我慢できるだろう。

重要なのは、矢崎凌空が他人のデザイン図を持ってきて数を稼いでいることだ。

このような行為……

公然と不正を働くような人間を、西村絵里は心の底から軽蔑していた。

……

昼休みの時間になった。

西村絵里は自分の机の上のデザイン図を整理した後、黒田真一のオフィスへ向かった。

西村絵里は思わず小さな手で眉間をさすった。

黒田真一……

どうして自分の作った料理を食べ飽きないのだろう?

自分はもう4年近く食べ続けて、実際にはもう少し飽きてきている。

それなのに黒田真一は……

ますます美味しそうに食べている。

今や会社全体と仙台市の新聞雑誌が、黒田奥さんの妊娠について熱心に議論している。

西村絵里は本当にプレッシャーを感じていた。

自分の携帯電話には、香坂悠生からの10件以上の不在着信があるが、西村絵里は一度も折り返していない。仕事上の用事がなく、香坂悠生と黒田真一の兄弟関係を考えると、彼女は意識的に安全な距離を保っていた。

香坂悠生の電話に返信しなくても、彼が主に自分の妊娠について尋ねたいのだろうということは分かっていた。