黒田真一は口元を少し上げ、大きな手で西村絵里の細い手首を掴み、率先して西村絵里を露天風呂へと引っ張りながら、何気なく言った。
「絵里、君が嫌だと言っても、それで済むわけじゃないんだよ」
西村絵里:「……」
男性の口元に浮かぶ意地悪な笑みを見て、まさに高圧的な社長そのものだった。
西村絵里は口元を引きつらせた。男女二人きりで温泉に入るなんて、良くない状況だ……
「黒田真一、私は仕事に戻らなきゃ。もうデザイン案は手に入れたから、もっとデザイン画を描かないと」
黒田真一は目を細め、目の前の西村絵里を面白そうに見つめた。特に彼女が自分を狼から身を守るかのように警戒している様子が、より一層興味深かった。
黒田真一はそのまま腰を曲げ、西村絵里を抱き上げると、露天風呂へと歩き出した。