第265章 男女二人で温泉に浸かる2更(7)

西村絵里は無意識に甘奈の名前を言いかけたが、急いで声を押し殺した。

黒田真一は黒い瞳を少し顰め、問い返した。「誰を連れていくって?」

「藤原海翔?」

西村絵里:「……」

「それとも香坂悠生、あるいはあの槙島明か?ん?」

西村絵里:「……」

黒田真一はこんなに子供じみていられないの?

こんなに理不尽に騒がないでよ。

西村絵里は口角をわずかに引き、それから不自然に口を開いた。

「黒田社長、あなたの想像力は、本当に素晴らしいですね。」

黒田真一は黒い瞳を細め、西村絵里の言葉に含まれる皮肉を聞き取ると、大きな手で女性の髪を撫で、そして薄い唇を西村絵里の耳たぶに落とした。

「想像力が良いわけじゃない。時々、本当に君を俺の体の中に溶け込ませたいと思うんだ。」

西村絵里:「……」

体の中に溶け込ませる。

それじゃ切り離せなくなるじゃない。

西村絵里はその言葉を聞いて、なぜか全身に寒気を感じ、黒田真一の所有欲に満ちた黒い瞳を見つめ、口角をわずかに引いた。

「黒田社長、冗談を言わないでください。」

言い終わると、西村絵里は痕跡を残さないように横に少し移動し、黒田真一から離れようとしたが、細い腰は男性にしっかりと抱きとめられ、動くことができなかった。

……

更衣室の入り口に着いたところで、西村絵里が服を着替えようとしたとき、ゴルフ場のマネージャーが恭しく迎えに来るのが見えた。

「黒田社長、いらっしゃいました……こちらは今年上半期のゴルフ場の売上です。ご確認ください。」

「ああ、今日はゴルフをしに来ただけで、会計を確認しに来たわけじゃない。後で黒田グループに送ってくれ。」

「はい、黒田社長。」

西村絵里は美しい瞳を輝かせた。

会計確認?

もしかして……

この広大なゴルフ場は、黒田真一のものなの?

そう考えると、西村絵里は驚いて隣の男性を見つめた。

黒田真一がこれほど裕福なことは知っていたが……

しかし、ここまでとは思わなかった。

これは仙台市、さらには国内でもトップクラスの高級ゴルフ場だ。

小さい頃、西村安国とここに来たとき、このゴルフ場のオーナーはどれほど裕福なのだろうと感心していた。

まさか、黒田真一がこのゴルフ場のオーナーだったとは。