青空ビル:
西村絵里が黒田真一の個室から出てきた後、密かに時間を計算した。
トイレに行くなら、10分もあれば十分だろう。
そのため、西村絵里は甘奈とかなり親密に過ごした。10分の余裕を持たせたつもりだったが、15分が経過してから、西村絵里はようやく名残惜しそうに口を開いた。
「甘奈ちゃん、ママはちょっとトイレに行ってくるね。すぐ戻るから、藤原おじさんとここで大人しく待っていてね。」
「了解、ママ。いい子にしてるよ。」
「うん、いい子ね。」
西村絵里は思わず甘奈の頬に近づき、思いきりキスをした。藤原海翔と簡単に視線を交わした後、名残惜しそうに個室を出て、隣の219号室へ直行した。
うーん……
この数字、本当に偶然だな。
部屋に入ると、西村絵里は黒田真一が優雅にステーキを切っている姿を目にした。彼は何をするにも物静かで落ち着いた様子で、彼の心の内を少しも読み取ることができない。
中華料理の他に、黒田真一は西洋料理も二品追加していた。
「ステーキは切ってあるから、そのまま食べられるよ。どうぞ、味わってみて。」
西村絵里:「……」
食べられないよ。
自分はまだ愛娘と一緒に夕食を取らなければならない。
黒田真一の食事を食べる余裕なんてどこにも……
西村絵里は唇の端を引き、無理に笑みを浮かべた。
「はい、ありがとうございます、黒田社長。」
「ああ。」
……
西村絵里が席に着くと、黒田真一は彼女が明らかに心ここにあらずの様子を見て、眉を寄せた。視線は西村絵里の紅潮した頬に落ち、先ほどまでの彼女の機嫌が良かったことは明らかだった。
黒田真一はゆっくりとグラスを持ち上げ、手に持った赤ワインを軽く一口飲んだ。
西村絵里は一口食べただけで、わざと具合が悪そうに言った。
「黒田社長、ちょっと気分が悪いので、トイレに行ってきます。」
黒田真一:「……」
黒田真一は目を細め、西村絵里のこの様子からは、本当に具合が悪いようには見えなかった。
またトイレ?
座ったばかりなのに、もう急いで外に出たいのか?
「ああ。」
西村絵里は黒田真一の許可を得ると、表情が明るくなり、急いで個室の外へ向かった。
黒田真一はその様子を見て、全身のオーラが冷たく凝縮した。
西村絵里が自分から離れていくとき、その後ろ姿はいつも極めて嬉しそうだった。