第350章 ママ、パパに従って1更(3)

「パパ、大好き……ねえ、お城を案内してくれない?……こんな大きな部屋に来たことないの」

別荘を城と呼ぶ小さな女の子を聞いて、黒田真一の瞳に一筋の痛ましさが走った。

「ん?どうしてそう言うの?」

「小さい頃はね、私とママは一つの部屋に住んでたの……それもすごく小さい部屋で、ベッド一つしか置けないくらいの……」

「その後ママはいい仕事を見つけてね……少し大きな部屋に引っ越したの……そしてその後は……えへへ、二部屋になったの」

「そうそう、パパ、私とママは車庫に住んでたこともあるの……冬はすごく寒くて、ママがずっと私を抱きしめていないと暖まれなかったの」

小さな女の子は過去の辛い出来事を笑顔で話していた。

黒田真一はそれを聞いて唇を引き締めた……

「そうなの?」

「うん……えへへ、だからママはいつも一生懸命お金を稼いでたの。意地悪なボスに会っても、ずっと我慢してたの」

甘奈はまだ黒田真一がその「意地悪なボス」だとは知らず、話しながら顔を輝かせ、まるで共通の敵に対するような口調だった。

黒田真一:「……」

そうか……

黒田真一は目を細めた。以前は西村绘里が一人で生活していて、黒田グループの給料が低くないのに、なぜ給料のことにこだわるのか理解できなかった。

今、彼は理解した。

黒田真一は唇を引き締め、自ら腕の中の小さな女の子を抱きしめ、うなずいた。

「うん」

「ねえパパ、ママの意地悪なボスを知ってる?知ってるなら、ママに残業させないでって言ってくれない?ママに私と一緒にいてほしいの……パパとも一緒にいてほしいな……ずっとずっと一緒にいられる?」

甘奈の潤んだ大きな瞳には願いが満ちていた。

パパとママがいる感じはとても素敵だった……

彼女はパパとママを失いたくなかった。

黒田真一は目を細め、そして確信を持って言った:「いいよ、パパが約束する」

「やったー、パパ万歳、はは……」

黒田真一は唇を引き締め、小さな女の子が喜ぶ様子を見て、大事な時間を邪魔されたにもかかわらず、気分は良かった。

「うん」

「そういえば、パパ、お姉さんがいるんでしょ?お姉さん怒らない?」

そう思うと、甘奈は潤んだ大きな瞳で可哀想そうに黒田真一を見た。

黒田真一はそれを聞いて唇を引き締めた。当時は大きな誤解だったが、今すぐには説明できなかった。