第355章 ママ、パパを受け入れて1更(8)

そして小さな手を伸ばして自分の服の裾をつかみ、とても哀れっぽく言った：「パパ、行っちゃうの……ダメダメ……行かないで……」

その瞬間、黒田真一の心は柔らかくなった。

甘奈がこれまでの何年もパパがそばにいなかったから、急に父親ができて、不安になるのも無理はないと理解した。

小さな女の子の気持ちを配慮して、黒田真一は自ら甘奈を抱いてキッチンへ料理を作りに行き、西村絵里を起こさないように甘奈に言い聞かせた。

……

食卓にて：

西村絵里は自ら甘奈のために茶碗蒸しをよそい、優しく言った：「さあ、食べなさい……」

「うん、ありがとうママ」

甘奈は自分の茶碗の茶碗蒸しを食べながら、思わず親指を立てて褒めた。

「パパの作った料理、本当においしい」

「甘奈、前にママの料理が世界一おいしいって言ったじゃない？」

「うーん……あのね……ママがパパの料理がおいしいって褒めたら、パパが毎日料理作ってくれるようになるでしょ……そうしたら、ママは力を節約できて、料理しなくていいじゃない」

西村絵里：「……」

本当に理にかなっている。

西村絵里はもはやどう反論していいのか分からなかった。

西村絵里は思わず笑い、小さな女の子の機転の利く様子を見て、優しく言った：「いたずらしないの、ご飯食べなさい」

「うん」

「甘奈、パンを一切れ食べなさい」

黒田真一は手を上げて、自分の前のパンを一切れ取って甘奈に渡した。

西村絵里は唇を噛んで……小声で言った：「甘奈は半分だけでいいわ、多くは……いえ、多く食べる必要はないの」

西村絵里は黒田真一に甘奈が病気であることを知られたくなかった。ある種のことは……出会った人みんなに話して、同情を買ったり他のものを得たりするものではない。

自分はただ一生懸命お金を稼いで、甘奈の病気を治してあげればいいのだ。

「わかった」

黒田真一は黒い瞳を少し顰めた。結局、西村絵里は甘奈の母親なのだから、子供の食事を計画するのは当然のことだ。

西村絵里はパンを二つに分け、自分と甘奈でそれぞれ半分ずつにした。

「はい、甘奈、食べなさい」

「ありがとう、ママ」

甘奈は西村絵里が自分に向かってまばたきするのを見て、理解した。

ママはパパに自分のことを心配させたくないんだ。