とても心地よい音色だった……
黒田真一は音楽的センスが優れていた。
西村絵里は目を伏せた……
いつの間にか、男性の磁性のある歌声の中で、深く眠りについていた。
黒田真一の前では、無防備で警戒心を解いていた……
西村絵里にとっては極めて珍しいことだった……
……
一曲歌い終わると、黒田真一は母娘が二人とも眠っていることに気づいた。
さすが母娘、寝姿も全く同じで、体を丸めて、とても可愛らしかった。
黒田真一は目を細め、自ら甘奈と西村絵里の薄い掛け布団をかけ直した。
甘奈は最初、黒田真一に甘えていたが、熟睡すると、思わず西村絵里の胸元に寄り添い、特に女性の胸に顔を埋めていた。
おそらく小さい頃の授乳の習慣からだろう。
黒田真一はそれを見て、薄い唇がかすかに微笑んだ。
かわいい子だ……とても甘えん坊だ。
初めて、子供と一緒に寝る経験だった。
黒田真一はかえって不眠になった。
広がる夜の闇の中で、傍らに西村絵里と甘奈がいることで、なぜか安心感があった。
自分の心が静かになったように感じた。
おそらく、帰るべき場所を見つけたからだろう。
そう思いながら、黒田真一は再び口角を上げた……
……
西村絵里が目を覚ましたとき、すでに翌朝の8時だった。
まずいと思った……
遅すぎるのではないか、朝食を作らなければならないし、甘奈を幼稚園に送らなければならない。
黒田真一の臨海別荘から花子幼稚園までは、まだ少し距離がある。
花子幼稚園から黒田グループまでも同様だ。
自分は出勤して打刻しなければならないのに。
そう思うと、西村絵里は体を起こしたが、意外なことに、隣には甘奈と黒田真一の姿がなかった。
西村絵里は美しい瞳を見開いた。
朝早くから、父娘はどこに行ったのだろう?
正確に言えば、黒田真一は自分の愛娘をどこに連れて行ったのだろう?
そう思うと、西村絵里は急いで起き上がり、上着を羽織って階下へ向かった。
……
西村絵里がリビングに着くと、銀の鈴のような楽しげな声が聞こえてきた。
西村絵里は美しい瞳を見開いた……
続いて、キッチンから興奮して走り出てくる甘奈の小さな姿が見えた。