第388章 黒田真一は私の夫1更(6)

「西村絵里?あなたは西村絵里よね?私は井上莉菜よ……」

井上莉菜は西村絵里を見つめた後、しばらく観察して、すぐに西村絵里だと分かった。

西村絵里は目の前の化粧の綺麗な女性を見て、真剣に考えた後、すぐに思い出した。

井上莉菜、自分と香坂悠生の高校の同級生……

お金持ちのお嬢様……

最初はそうではなく、母親がサンちゃんから正妻になった、私生児で、とても貧しかった。父親は典型的な成り上がり。

後に不動産業で財を成した。

その後、井上莉菜は実家に引き取られた。

西村絵里は目を伏せた……

実際、彼女はこの井上莉菜に対して好感を持っていなかった。

高校に入ったばかりの頃、彼女はいつも自分にべったりくっついて、他の女子の悪口を言っていたことを覚えている。

あの頃から、西村絵里は陰口を叩く女性に興味がなかった。

今はなおさらだ。

かすかに覚えている……西村家が没落した時……彼女は誰よりも明るく笑って、他のクラスメイトに言った。

彼女はずっと前から自分がろくでもない人間だと見抜いていて、西村家はいずれ崩壊すると。

過去の出来事が鮮明に思い出され、普段なら西村絵里はきっと我慢できずに近づいて、その女に平手打ちをくらわせていただろう。

今となっては、西村絵里に残されているのは冷静さだけだった。

「井上さん、お久しぶりです。」

西村絵里はこう言いながら、手を差し出さなかった。

なぜなら……

こんな人と握手したら、家に帰って消毒液で手を洗わなければならないから。

そうしないと、甘奈を抱っこする時に、甘奈に申し訳ない気持ちになってしまう。

井上莉菜は目の前の小柄な女性を見て、口元をゆがめた。

ふん……この西村絵里、結構うまくやってるじゃない。

子供までいるなんて、この子は……まさかこの男性との子供じゃないでしょうね。

お兄さん……井上莉菜は表情を変えた。香坂悠生の家の過去を知っているため、つい推測してしまう、この男性は黒田真一なのではないかと。

井上莉菜は最初、目の前の男性が美しく、とても魅力的で、天下を睥睨するような王者の気迫を持っていると感じただけだった。

しかし、この人が黒田真一だとは思いもよらなかった……

本当にかっこよすぎる。

井上莉菜はよだれを飲み込んだ。この黒田真一は……結婚しているんじゃなかった?