西村絵里は美しい眉を寄せ、男の妖艶な姿を見て、心の中で嫌悪感を抱いた。
甘奈はピアニストの優雅な演奏を非常に気に入っていた……普段よりもずっと静かで、真剣に鑑賞していた。
西村絵里は小さな少女のとても礼儀正しい様子を見て、口元に微笑みを浮かべた。
黒田真一は時々小さな少女に食べ物を食べさせていた……
なぜか、小さな少女が食べる姿を見ていると、心の中に言い表せない満足感があった。
とても心地よかった。
……
三人家族は静かに食事をし、夕食を終えると、すでに夜の8時だった。
西村絵里はいつものように小さな手を伸ばして甘奈を抱き上げようとしたが、黒田真一がより素早く動いて、ベビーシートから甘奈を抱き上げ、出口へと向かうのを見た。
「行こうか」
「うん」
黒田真一の多くの何気ない仕草に、西村絵里は多かれ少なかれ、心の波紋が揺さぶられるのを感じていた。
おそらく……自分の心の中でも、甘奈の生活にパパの存在が現れることを望んでいたのかもしれない。
ただ……
黒田真一の信頼性は、どれほどのものだろうか?
……
西村絵里と黒田真一が甘奈を抱いてホールに到着したとき、黒田真一は淡々と言った。「請求書に記入しておいてください」
「かしこまりました」
西村絵里は黒田真一が支払いをせずに立ち去るのを見て、唾を飲み込んだ。さっき黒田真一が開けた赤ワインは、少なくとも数十万円はするだろう。
西村絵里は黒田真一の高額な消費に舌を巻き、そして小さな手が男性の手の中に握られた。
「どうした?黒田奥さんは心配しているのか?」
「うん」
西村絵里は無意識に返事をした。
うーん……
西洋料理と赤ワインだけで数十万円。
これは普通の人の一生分の給料だよ。
黒田真一は西村絵里のそんな心配そうな様子を見つめ、口元の笑みを深めた。
「次回は気をつけるよ、いいかな?」
赤ワインを少し飲んでいたため、黒田真一の言葉は非常に磁性を帯び、魅惑的な雰囲気が加わり、西村絵里の心臓は半拍飛んだ。
「黒田真一……行きましょう」
「いいよ」
黒田真一は西村絵里の少し戸惑い、わずかに赤らんだ顔を見て、気分が良くなった。
今、西村絵里との付き合い方がわかってきた。
ただ、二人が入り口に着いたとき、香坂悠生と魅力的な女性の姿が見えた。