堇顔

表向きだけの結婚契約――有効期限は3年。
形だけの夫婦関係、まるで他人同然。
そして契約終了を目前に、彼女は新たな職場に就職する。まさか、その上司が夫だった。
「すみません。邪魔するつもりはありません。ただ、黒田グループを選んだのは……お給料が良かったからです」
冷静な態度で履歴書をめくる男は、ふと問いかけた。
「西村絵里、19歳のとき、どうして1年間休学していたの？」
「……大学1年の時、家庭に少し事情がありまして」
「そう？じゃあ、なぜ下腹部に傷があるの？」
「……虫垂炎です」
その瞳は、どこまでも深く、彼女の心を見透かすようだった。
3年の契約が満了し、彼女は痛みを堪えながら、静かに、そして毅然と背を向けて離婚届にサインした。
けれどその後も、なぜか元夫はしつこく付きまとってきて……
さらには、彼女の恋のチャンスまで次々と潰してくる。

黒田さん、結婚して見ませんか～

しかし、大きな手は女性の衣服から離れ、代わりに西村绘里の細い腰を抱き寄せ、強く抱きしめた。


この言葉が西村绘里の口から出た。


黒田真一は思わず自己嘲笑せずにはいられなかった。


黒田真一、お前はそんなに世間知らずだったのか、自分でわかっているのか？


しばらくして、西村绘里が本当に息ができなくなったとき、黒田真一はようやく名残惜しそうに女性を放し、代わりに西村绘里を抱きしめた。


西村绘里は大きく息を吸い、ようやく呼吸を整えることができた。


黒田真一は満足げに口角を上げ、断固として言った：「西村绘里……私はあなたを必ず手に入れる」


同棲するだけでしょ、私には甘奈がいるし、この男に何ができるか見ものね。


西村绘里は口角をピクリと動かし、男性に抱きしめられて身動きが取れず、思わず口を開いた。


「黒田真一、甘奈が一人で寝るのは心配だから、真ん中に寝かせてもいい？」


黒田真一はあっさりと返事をしたが、声は異常に掠れていて、何かを我慢しているようだった。西村绘里が起き上がって甘奈を二人の間に抱き寄せるのを見て、言った。


もう浴びたんじゃなかった？


男性の顔が不自然に赤くなり、ずっと我慢している様子を見て、西村绘里はすぐに理解した。


西村绘里は急いで答え、甘奈と位置を入れ替えて、小さな女の子を抱きながら、ゆっくりと自分の呼吸を整えた。


黒田真一は冷水のシャワーを浴びるしかなく……自分がなんて情けないんだと呪った。一人の女性に対してこんなにも欲望を抑えられないなんて。


西村绘里が甘奈を抱いてうとうとし始めたとき、ベッドのもう一方が沈むのを感じ、男性の清々しく爽やかな香りが自分と甘奈を包み込み、とても心地よかった。


おそらく黒田真一が自分に何もしないとわかっていたからか、西村绘里は男性の落ち着いた、良い香りの中で深く眠りについた。


第404章 名目上の夫婦1更(2)

第404章名目上の夫婦1更(2)