「ママ、パパのところって本当に良いね、何もかも良いの」
「え?」
「もちろん、一番大事なのはパパ……」
西村绘里:「……」
胸が痛む。
いったい誰が、十月十日お腹を痛めて、彼女を産んだというのか。
西村绘里の美しい瞳に光が走った。今や小さな娘は黒田真一にすっかり買収されてしまった。自己が切り札を出さなければ……もうダメかもしれない。
そう思うと、西村绘里は手のひらにベビーシャンプーを注ぎながら口を開いた。
「甘奈ちゃん……ママとひとつ相談があるんだけど、どう?」
「いいよ……」
西村绘里は小さな手で甘奈の頭を洗いながら、咳払いをして言った。
「実はね……ママは甘奈ちゃんとママが同じ陣営に立ってほしいの。パパは外の人でしょう……そうでしょ?私たち二人は3年の絆があるのに、黒田真一と甘奈ちゃんが知り合ったのはつい最近じゃない」