「うーん……いいよ。」
西村絵里は小さなロリータが一人で水の中にいても怖がらない様子を見て、口元に笑みを浮かべた。この愛らしい姿を見ると、気分が良くなった。
西村絵里は哺乳瓶を持って小さなロリータに近づき、しゃがもうとした瞬間、小さな手が彼女の手をつかんだ。
「ママ、降りてきて私とパパと一緒に遊ぼうよ。」
「だめ……」
西村絵里は手を引っ込めようとしたが、近くにいた黒田真一の動きの方が速かった。彼は素早く泳いで近づき、大きな手で西村絵里の小さな手をつかみ、少し力を入れると、彼女は前のめりに倒れていった。
「あっ……」
西村絵里は驚いて声を上げたが、水に激しく落ちることはなく、黒田真一の腕の中に落ちた。
しかし……大きな水しぶきが上がるのは避けられず、温かい液体が自分に向かって来るのを感じ、西村絵里は反射的に小さな手を伸ばして黒田真一の首に巻き付けた。
「やめて……」
水という液体が自分に向かって広がることに、西村絵里はまだひどく不安を感じていた。
西村絵里は目の前の黒田真一の首にしっかりと腕を巻き付け、それが黒田真一の口元の笑みをさらに深くさせた。
黒田真一は目の前の女性をじっと見つめ、何気なく言った。「ふーん?黒田奥さんは自ら抱きついてきたのかな?」
西村絵里:「……」
男性の磁性のある声が耳元で響き、西村絵里は落ち着かない様子で視線をそらした。
しかし……目の前の男性をどれほど嫌っていても、手を離すことはできず、ただ目の前の男性にしがみついて、何とか水に落ちないようにするしかなかった。
傍らで見ていた甘奈は、それを見て興奮して手足をばたつかせた。
「わぁ……パパ……ママを抱きしめてる……パパ、早く早く……壁ドンして!」
西村絵里:「……」
甘奈、本当に実の子なの?
以前、お互いの身分に誤解があったとき、甘奈は黒田真一に奥さんを壁ドンするよう教えていた……その壁ドンが自分に向けられるなんて、まあ仕方ないとしても。
今や、関係がこんなにもあからさまになったというのに。
小さなロリータはまだ黒田真一に自分を壁ドンするよう教えている……
西村絵里の心は複雑だった。
自分が育てた娘が、よその味方をするなんて。
黒田真一はそれを聞いて、口元の笑みがさらに深くなった。
甘奈……本当に素晴らしい助っ人だ。