第469章 旦那様、口を開けて2更(9)

黒田真一は彼の愛娘を抱いているだけで、西村絵里の手を取ることはなかった。

この夫婦関係は……

とても疎遠に見える。

ゲイル社長は少し戸惑いながら、口元に笑みを浮かべた。

「さあさあ、中へどうぞ。食事の準備はできていますよ。」

「ありがとう。」

黒田真一は甘奈を抱きながらリビングの方向へ歩き出したが、視線の端では後ろにいる西村絵里に目を向けていた。絵里のドレスは少し長かったので、階段を上るときにはドレスの裾を持ち上げる必要があった。

黒田真一は大きな手を伸ばしたが、西村絵里は下を向いていたため気づかなかった。

黒田真一は歩いていた足を、意識的か無意識的か少し止めた。

うーん……

西村絵里は今回避妊薬を飲もうとしている。だから今回は、何があっても絵里の気まぐれに任せるわけにはいかない。