……
西村絵里はリビングに入ると、その豪華さに思わず感嘆した。
あちこちに高価な油絵やアート作品が見られ……
ヨーロッパ14世紀の雰囲気が一気に押し寄せてくる。
西村絵里は唇を軽く噛み、初めてこのような場所に来て、多少の違和感を覚えながら、小さな手で眉間を軽くさすった。そのときゲイル社長が熱心に口を開いた。
「黒田さん、黒田奥さん、どうぞお座りください」
「はい……」
西村絵里は黒田真一の隣に座った。甘奈は今、黒田真一にべったりとくっついていて、食事の時も黒田真一の隣に座りたがった。
ゲイル社長は子供用の椅子を用意させたので、小さな女の子は黒田真一の隣に座った。
西村絵里はむしろ気楽に感じた。子供に食事を食べさせるのは、いつも面倒なことだった。
「黒田さんと奥さまのお好みがわからなかったので、簡単に用意しました。これは黒トリュフで、特別にフランス中南部から調達させたものです……」
西村絵里は口元を緩めた。すると黒田真一が口を開いた。「実はイタリアのアルバ地方の白トリュフも悪くないですよ」
西村絵里はトリュフが貴重なものだと知っていた。テーブルの上には、牡蠣、アワビ、ステーキ、フレンチブリュレ、サーモンなど。
一品一品、料理は精巧だった。
しかし西村絵里の食欲はあまり湧かなかった……
「ゲイル社長、これは私が持ってきたロイヤルサルートです」
ロイヤルサルート……
西村絵里は目を伏せ、視線を横で使用人が開けているロイヤルサルート21年に落とした。50年前、シーバスブラザーズ社がイギリスのエリザベス女王の戴冠式を祝うために特別に醸造した「ロイヤルサルート」。
「ロイヤルサルート」という名前は、訪問する皇室メンバーに21発の礼砲を撃つ習慣に由来している。
この貴重な21年熟成のウイスキーは、赤、緑、青、茶色の陶器の瓶に入れられ、より一層優雅で豪華に見える。
このボトルのロイヤルサルート……日本円に換算すると、西村絵里はその数字の桁数が見えないほど高価だと思った。
だから、相手側がもてなしてくれているとはいえ、黒田真一もまた贈り物で返礼していた。
十分に清算できたというわけだ。
……
西村絵里は率先して甘奈のために砂糖の少ない食べ物をいくつか取り分け、小さな女の子の皿に置いた後、自分の皿のステーキをゆっくりと食べ始めた。