黒田真一は水滴が女性の白磁のような首筋からゆっくりと流れ落ちるのを見つめていた。その肌は柔らかく、雪のように白く輝いていた。
西村絵里は美しかった。
ただ、黒田真一は西村絵里がこれほどまでに息を呑むほど美しいとは思っていなかった。
自分が息ができないほどに。
西村絵里は男性の上に跨ったまま、身動きが取れず、ひどく落ち着かない様子だった。
どうしても違和感があった……
「黒田真一、私……」
自分がどうして上になっているのか。
西村絵里は顔を真っ赤にしていた。
その姿が黒田真一の視線に入ると、とても可愛らしく見えた。
「ダメ……バスタブの中じゃなくて、外に……行きましょう」
逃げられないと悟った西村絵里は、もう拒絶しないことにした。
結局……黒田真一の言う通り、これは夫婦の義務なのだから。
昨夜はまだ心に隔たりがあった。
しかし、今日黒田真一が自分を愛していると自ら口にするのを聞いて。
西村絵里は、すべての隔たりが風に吹き飛ばされたように感じた。
「いいよ」
黒田真一は簡単に体を洗った後、近くにあったバスタオルを西村絵里の体に巻き、自分の腰にもタオルを巻いて、西村絵里を抱き上げた。まるで子供を抱くように、そのままソファに向かって歩いていった。
西村絵里は体が熱く、心臓が喉から飛び出しそうだった。
甘奈が大きなベッドで寝ていたため、黒田真一は当然西村絵里を寝室に連れて行くことはできず、代わりに彼女をピアノルームへと連れて行った。
西村絵里は美しい瞳を震わせた……
ピアノルーム!
これは……
どこかで経験したことがあるような。
以前、藤原家のピアノルームで。
自分がイタリアで初めて泊まった大統領スイートにも、専用のピアノがあった。
イタリアは本当にロマンチックな国で、すべてが極限まで追求されていた。
西村絵里は黒田真一が自分をピアノの前に連れて行こうとしていることに気づき、かすれた声で言った。「甘奈が寝てるわ、黒田真一」
「大丈夫、この部屋は防音処理がしてある。甘奈には何も聞こえない……」
言葉を切って、黒田真一は西村絵里を黒と白の鍵盤の上に座らせた。
西村絵里:「……」
男性の妖艶で傲慢な言葉を聞いて、西村絵里の心臓は半拍飛んだ。
黒田真一、彼はなんてこんなに傲慢で、狂気的なの。