西村絵里はまだ信じられない気持ちでいた……
二人の接点はあまりにも少なく、3年の婚約期間のうち、丸2年は空白だったのだ。
黒田グループで働き始めても、ただの上司と部下の関係だった。
そしてその後……
自分は特別際立った女性ではなく、カリーナが言うように、素晴らしい家柄の出身でもない……
しかも子供もいる。
さらには……以前は黒田真一の弟である香坂悠生とも複雑な関係にあった。
今では藤原海翔までいる。
要するに、黒田真一の言葉を借りれば……周りには厄介な異性が次々と現れる。
結局、西村絵里は自分が塵のように卑小な女性で、黒田真一は神のように高みにいると感じていた。
自分には手が届かない存在だ。
西村絵里は……今でもまだ夢の中にいるような気分だった。
黒田真一は西村絵里の美しい瞳が珍しく迷いを帯びているのを見て、薄い唇を少し上げ、大きな手で女性の頬を撫で、深い瞳で見つめた。