キッチンにて:
西村絵里の左手人差し指は黒田真一の口の中に含まれたままで、そして男性が自ら絆創膏を探し出し、丁寧に貼ってくれるのを見ていた。
ごく普通のことをしているだけなのに、黒田真一という男性は何をするにも極めて優雅だった。
このような何気ない魅惑的な姿に、彼女は頭皮がゾクゾクし、心も恍惚としてしまった。
西村絵里:「……」
ふと、黒田真一は実は家庭に欠かせない良い男性の一人だと思った。
とても良い……
西村絵里は口元を引き締め、自分の人差し指に貼られた綺麗な絆創膏を見ながら、小さな声で言った。
「指を切るのはよくあることだから、大丈夫よ。私は料理を続けるわ、あなたは早く出て行って。」
「君は手を怪我したんだ、不便だろう。やっぱり僕がやるよ。」
指の怪我とはいえ、十指は心臓につながっている。この痛みは体にあるのだから、気持ちいいものではない。
西村絵里:「……」
西村絵里は長身の男性が自分に近づいてくるのを見て、無意識に後ろに下がったが、その後、ほとんど男性の腕の中に包まれるような形になった。
馴染みのあるムスクの香りが鼻をつき、西村絵里は少し恍惚とし、男性の大きな手が自分の背中で忙しく動いているのを感じて、ようやく黒田真一が自分のエプロンを解いて、自分に着けようとしていることに気づいた。
男性には余計な考えはなく、自分が考えすぎていただけだった。
黒田真一は興味深そうに西村絵里の赤らんだ顔を見て、薄い唇を開いた。
「西村絵里、出て行って甘奈とテレビを見ていてくれないか。」
西村絵里:「……」
こんなに良い人……
西村絵里もそれを望んでいたので、口元を引き締めた。
「わかったわ、ありがとう。」
言い終わると、西村絵里は急いで逃げるようにキッチンを出た。さっき黒田真一に甘奈の虫歯の問題について質問され、心が乱れていたのだ。
よく整理しなければならない。
……
黒田真一は女性の未練のない背中を見つめ、口元を引き締めた。
やはり……西村絵里の性格は、関わらなくていいことには関わらないというものだ。
本当に……可愛いな。
黒田真一は黒い瞳を細め、深い暗い光が一瞬過った。
藤原海翔はリビングに座っているのに、自分がこんなことをするなんて……なんだか放縦な意味があるような気がするな。