第539章 甘奈は顧姓か簡姓か2更(1)

キッチンにて:

西村絵里の左手人差し指は黒田真一の口の中に含まれたままで、そして男性が自ら絆創膏を探し出し、丁寧に貼ってくれるのを見ていた。

ごく普通のことをしているだけなのに、黒田真一という男性は何をするにも極めて優雅だった。

このような何気ない魅惑的な姿に、彼女は頭皮がゾクゾクし、心も恍惚としてしまった。

西村絵里:「……」

ふと、黒田真一は実は家庭に欠かせない良い男性の一人だと思った。

とても良い……

西村絵里は口元を引き締め、自分の人差し指に貼られた綺麗な絆創膏を見ながら、小さな声で言った。

「指を切るのはよくあることだから、大丈夫よ。私は料理を続けるわ、あなたは早く出て行って。」

「君は手を怪我したんだ、不便だろう。やっぱり僕がやるよ。」

指の怪我とはいえ、十指は心臓につながっている。この痛みは体にあるのだから、気持ちいいものではない。

西村絵里:「……」

西村絵里は長身の男性が自分に近づいてくるのを見て、無意識に後ろに下がったが、その後、ほとんど男性の腕の中に包まれるような形になった。

馴染みのあるムスクの香りが鼻をつき、西村絵里は少し恍惚とし、男性の大きな手が自分の背中で忙しく動いているのを感じて、ようやく黒田真一が自分のエプロンを解いて、自分に着けようとしていることに気づいた。

男性には余計な考えはなく、自分が考えすぎていただけだった。

黒田真一は興味深そうに西村絵里の赤らんだ顔を見て、薄い唇を開いた。

「西村絵里、出て行って甘奈とテレビを見ていてくれないか。」

西村絵里:「……」

こんなに良い人……

西村絵里もそれを望んでいたので、口元を引き締めた。

「わかったわ、ありがとう。」

言い終わると、西村絵里は急いで逃げるようにキッチンを出た。さっき黒田真一に甘奈の虫歯の問題について質問され、心が乱れていたのだ。

よく整理しなければならない。

……

黒田真一は女性の未練のない背中を見つめ、口元を引き締めた。

やはり……西村絵里の性格は、関わらなくていいことには関わらないというものだ。

本当に……可愛いな。

黒田真一は黒い瞳を細め、深い暗い光が一瞬過った。

藤原海翔はリビングに座っているのに、自分がこんなことをするなんて……なんだか放縦な意味があるような気がするな。