この姿の矢崎凌空を見て、西村绘里は思わずカリーナを思い出した……
「黒田社長……申し訳ありません、午前中のお忙しい時間に、お仕事の邪魔をして。」
「何か用か?」
黒田真一は何気なく用件を尋ねたが、視線は一度も矢崎凌空に留まることなく、すべて彼女の隣にいる西村绘里に注がれていた。
西村绘里は黒いスーツに白いシャツを合わせ、その腰は本当に細く、片手で掴めそうだった。
美人は国をも傾ける。
特に西村绘里が笑わない時は、全身から漂う独特の雰囲気が……思わず視線を引き付け、魅了される。
西村绘里のような女性に出会ったことがなかった。静かに隅に立っているだけで、男性にとっては魅惑的で……
「実はですね……黒田社長、ご存知の通り、先日新しい規定を出されましたよね。今月末までにデザイン部で最も成績が良かった者がデザイン部の主任になれるという。」
西村绘里はそれを聞いて、少し理解した。
恐らく……本当の目的は別にあるのだろう。
西村绘里は口元に薄く皮肉な笑みを浮かべ、静かに矢崎凌空の話を聞き続けた。
まるで猿回しのような感覚が漂っていた……
黒田真一はそれを聞いて薄い唇を少し動かしたが、端正な顔には余計な表情はなく、淡々と返事をした。
「ああ。」
黒田真一は仕事中、絶対に冷たく、近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。
西村绘里も男性のこの冴えた雰囲気に少し圧倒されていた。
矢崎凌空は自分勝手に話し続けた。「黒田社長、私は黒田グループで長年働いてきましたし、ベテランと言えるでしょう……ああ……時代は変わるものですね……前の波が次の波を押し出し、次の波は砂浜で死ぬと言いますが。」
少し間を置いて、矢崎凌空は続けた。
「私はですね……今回の競争から降りて、デザイン部の主任の座を西村绘里に譲るつもりです。」
西村绘里:「……」
くそ、矢崎凌空は純粋無垢を演じに来たのか。
自分の成績はここにはっきりとあるのに、何の権利があって譲るというのか。
それに……譲る資格なんてあるのか……
月末まであと数日しかない。
自分は勝利を確信している。
彼女が今ここで……見せかけの行為をしているのは、純粋無垢を装っているだけでなく、偽善者でもあるということだ。