第576章 西村絵里は黒田奥様1更(1)

病室の入り口:

西村絵里は目の前で大言壮語する女性を見て、唇の端に嘲笑の色を浮かべた。

この山口琴子は……

本当に諦めきれず、今また黒田真一の前で自分を中傷している。

どうやら……黒田真一が自分をデザイン部の主任に抜擢しようとしていると勘違いして、この機会に自分と黒田真一の関係を引き離そうとしているようだ。

西村絵里は唇の端に薄い弧を描き、山口琴子のような人と言い争って恥をかかせることは……

確かに……

自分には全く興味がない。

山口琴子は黒田真一におべっかを使っているが、そのおべっかは逆効果になっていた。

なぜなら、自分は黒田真一の外の女であるだけでなく、噂の黒田奥さんでもあるからだ。

そう思うと、西村絵里の全身からさらに冷たさが増した。

黒田真一はその言葉を聞くと、全身のオーラが完全に冷たくなり、恐ろしいほど厳しく、黒い瞳からは冷たい光が放たれていた。

西村絵里は……今の自分が最も大切にしている女性だ……

この女は、よくも自分の目の前で西村絵里を中傷できるものだ。

本当に死を求めているようだ。

そう思うと、黒田真一の鋭い黒い瞳が目の前の山口琴子に向けられ、山口琴子は思わず身震いした。

黒田真一は……自分が黒田家に嫁いで数年経っても。

この黒田真一は……常に測り知れないタイプだった……

2年前、婚姻届を出して結婚し、黒田グループの株式を手に入れ、黒田グループの舵を取り、今や黒田グループは勢いを増している。

あの黒田奥さんが誰なのか、自分はあらゆる手段を尽くして探ろうとした。

しかし知ることはできなかった。

今や……この黒田真一は西村絵里を利用して、矢崎凌空のデザイン部主任の地位を手に入れようとしている。

この男は羽が生え揃い、今や自分を黒田グループから根こそぎ排除しようとしているのだ。

この黒田グループが黒田真一の母親の持参金であろうとなかろうと、自分が欲しいものは必ず手に入れる……

自分は仙台市で最も権力のある女性になるのだ。

山口琴子は大きな場面を見てきた人間だったが、黒田真一から発せられる威圧的なオーラに対しては、やはり怯んでしまい、話す言葉も慎重になった。