西村絵里は空気を読んで直接休憩室に入った。休憩室に入ると、まだ男性の磁性のある流暢なイタリア語が聞こえていた。
おそらくカーロの方の話だろう。
西村絵里の美しい瞳に一筋の暗い光が走った……
想像し難い……ヨーロッパ経済を支配する大財閥、カーロ。その背後の舵取りが、なんと仙台市に……
……
西村絵里が豪華な昼食を用意した後、黒田真一が大きな手を上げて自分の眉間に置き、額をさすっているのを見た。明らかに少し疲れていた。
この黒田グループの仕事は、もう少数ではなくなっていた。
それにカーロの件もある。
この黒田真一がどんなに鉄のように強くても、体力が追いつかないだろう。
今は……黒田真一と自分と甘奈が一緒に住んでいて、会社の仕事は、夜に帰宅したら、絶対に家に持ち帰って処理することはない。
西村絵里は唇を軽く噛み、優しい声で言った。
「食事にしましょう」
「ああ……」
黒田真一の視線がテーブルの上に向けられた。茶碗蒸し、きゅうりと肉の炒め物、スズキの蒸し物、酢豚、そして海苔と卵のスープ。
本当に豪華だ。
すべて家庭料理だが、黒田真一はそれを見て思わず食欲が湧いてきた。黒の瞳に一筋の艶やかな光が走り、薄い唇がかすかに上がった。
「黒田奥さんの腕前はなかなかだね」
「黒田さんのお褒めの言葉、ありがとうございます」
西村絵里は甘い笑顔を浮かべた。形式的な笑顔ではあったが、以前よりも温かみが増していた。
黒田真一も女性のこのような微妙な変化を感じ取り、再び黒い瞳を細め、艶やかな光を放った。
「ボーンの方から、君の作品だけをヨーロッパデザイン展の審査に送ったそうだ。さっきそのことを話していたんだ」
西村絵里はそれを聞いて、美しい瞳を見開いた……
ボーンは少し積極的すぎるのではないか。
このヨーロッパデザイン展は、世界で毎年最大のデザイン展だ。
そこで審査を受けることができるなら、デザイナーにとっては既に大きな認められ方だ。
もし賞を取れたら、完全にデザイン界の先輩級の人物になれる。
カーロの指示がなければ、ボーンもそんな大胆な許可は出さなかっただろう。
しかし、デザイナーとしての本人である西村絵里は、やはり気分が良かった。