第589章 年前の出来事2更新購読をお願いします(8)

西村絵里は空気を読んで直接休憩室に入った。休憩室に入ると、まだ男性の磁性のある流暢なイタリア語が聞こえていた。

おそらくカーロの方の話だろう。

西村絵里の美しい瞳に一筋の暗い光が走った……

想像し難い……ヨーロッパ経済を支配する大財閥、カーロ。その背後の舵取りが、なんと仙台市に……

……

西村絵里が豪華な昼食を用意した後、黒田真一が大きな手を上げて自分の眉間に置き、額をさすっているのを見た。明らかに少し疲れていた。

この黒田グループの仕事は、もう少数ではなくなっていた。

それにカーロの件もある。

この黒田真一がどんなに鉄のように強くても、体力が追いつかないだろう。

今は……黒田真一と自分と甘奈が一緒に住んでいて、会社の仕事は、夜に帰宅したら、絶対に家に持ち帰って処理することはない。

西村絵里は唇を軽く噛み、優しい声で言った。

「食事にしましょう」

「ああ……」

黒田真一の視線がテーブルの上に向けられた。茶碗蒸し、きゅうりと肉の炒め物、スズキの蒸し物、酢豚、そして海苔と卵のスープ。

本当に豪華だ。

すべて家庭料理だが、黒田真一はそれを見て思わず食欲が湧いてきた。黒の瞳に一筋の艶やかな光が走り、薄い唇がかすかに上がった。

「黒田奥さんの腕前はなかなかだね」

「黒田さんのお褒めの言葉、ありがとうございます」

西村絵里は甘い笑顔を浮かべた。形式的な笑顔ではあったが、以前よりも温かみが増していた。

黒田真一も女性のこのような微妙な変化を感じ取り、再び黒い瞳を細め、艶やかな光を放った。

「ボーンの方から、君の作品だけをヨーロッパデザイン展の審査に送ったそうだ。さっきそのことを話していたんだ」

西村絵里はそれを聞いて、美しい瞳を見開いた……

ボーンは少し積極的すぎるのではないか。

このヨーロッパデザイン展は、世界で毎年最大のデザイン展だ。

そこで審査を受けることができるなら、デザイナーにとっては既に大きな認められ方だ。

もし賞を取れたら、完全にデザイン界の先輩級の人物になれる。

カーロの指示がなければ、ボーンもそんな大胆な許可は出さなかっただろう。

しかし、デザイナーとしての本人である西村絵里は、やはり気分が良かった。