堇顔

表向きだけの結婚契約――有効期限は3年。
形だけの夫婦関係、まるで他人同然。
そして契約終了を目前に、彼女は新たな職場に就職する。まさか、その上司が夫だった。
「すみません。邪魔するつもりはありません。ただ、黒田グループを選んだのは……お給料が良かったからです」
冷静な態度で履歴書をめくる男は、ふと問いかけた。
「西村絵里、19歳のとき、どうして1年間休学していたの？」
「……大学1年の時、家庭に少し事情がありまして」
「そう？じゃあ、なぜ下腹部に傷があるの？」
「……虫垂炎です」
その瞳は、どこまでも深く、彼女の心を見透かすようだった。
3年の契約が満了し、彼女は痛みを堪えながら、静かに、そして毅然と背を向けて離婚届にサインした。
けれどその後も、なぜか元夫はしつこく付きまとってきて……
さらには、彼女の恋のチャンスまで次々と潰してくる。

黒田さん、結婚して見ませんか～

彼女はこっそりとウェイターに西村绘里を連れてホテルを出るように見せかけて、実際には薬を盛られた黒田真一の部屋の近くへ案内させた。


さらに、部屋の監視カメラもすべて準備していた。


しかし...予想外だったのは...


黒田真一は薬を盛られた状態でも、ライトを消すことを選んだ...赤外線を使っていたにもかかわらず...


二人が絡み合っているとき、西村绘里が誤って水のグラスを電気回路に向かって投げてしまい、部屋の電気系統が完全に焼き付いてしまった。


だから...部屋の中で、自分が証拠として捕らえようとしていたものはすべて失われてしまった。


この件について、山口琴子は悔しくてたまらなかった。


その後、黒田真一の行動はさらに謎めいたものとなり、自分がもう一度チャンスを得ようとしても、天に登るより難しいことは明らかだった。


その後も、自分の心の中では黒田真一の勢力を恐れていた。


だから黒田真一に対して、直接対決する勇気はなく、裏で手を回すことしかできなかった。黒田グループに人を送り込むことも含めて。


「奥様、西村绘里と黒田真一は当時のことを知っているのでしょうか？」


「ありえないわ。あの時、二人はほとんど言葉を交わさなかったし、部屋は真っ暗で、その後西村绘里はすぐに逃げ出した...」


二人は顔を合わせることすらなかった。


当時、水をこぼして回路が焼き付いたため、そのフロアの監視カメラもショートしてしまった。


だから...西村绘里が黒田真一の部屋にいたことを証明することもできない。


二人の初対面は、まさに謎のような存在だった。


山口琴子がより気になっていたのは、その後二人がどのように関わるようになったのかということだった。


この西村绘里のお腹に何か動きがないことを祈るばかりだ。もし...本当に妊娠して、子供を産むようなことになれば、自分はそんな忌まわしい子供がこの世に生まれることを許すわけにはいかない。


「奥様、井上莉菜のことは、どうするおつもりですか？」


第588章 4年前の出来事2更新購読募集(7)