第612章 黒田奥様なしでは眠れない2更(3)

「黒田真一……あなたは甘奈じゃないでしょう。今や甘奈でさえ誰かに食べさせてもらう必要はないわ。スプーンを渡せば自分で食べられるのよ」

西村絵里の明らかに嫌そうな言葉を聞き、自分と甘奈を比較されて、黒田真一は細長い黒い瞳を少し細め、そこに妖艶な光が閃いた。

「ふむ、でも、甘奈がもし私という患者をこんな風に扱っているのを知ったら……どう思うだろうね?私は思うんだ……娘も君が私に食べさせるべきだと賛成するんじゃないかな?」

少し間を置いて、黒田真一は再び自分の言葉に力を込めた。

「西村絵里、もし君が私に食べさせてくれないなら、明日藤原海翔に電話して、娘に君が私をいじめていると言うよ。患者を虐待していると。」

西村絵里:「……」

人として黒田真一ほど厚かましくなれる人は確かに珍しいものだ。黒田真一の言葉を聞いて、西村絵里は少し萎縮した。

もし甘奈が黒田真一が怪我をしたことを知ったら、きっととても悲しむだろう。

食事を食べさせるどころか、ふふっ、何でもしてあげることになるだろう。

西村絵里も実は喜んでやりたいのだが……

ただ、男のこんな腹黒い様子が気に入らないだけだ。

無意識のうちに……自分と黒田真一は今駆け引きの状態にあるように感じていた……先に真剣になった方が負けだと。

二人とも……どうやら真剣になっている感じだった。

特に自分は、西村絵里は自分の心が沈んでいく音が聞こえるようだった。

「わかったわ、黒田真一、あなたの勝ち……食べさせてあげる、口を開けて。」

「うん!」

黒田真一は満足げに口角を上げ、西村絵里の美しい瞳の中の嫌悪を見逃さなかった……女性のそんな小さな気性がとても可愛いと感じた。

病気の合間に、西村絵里をからかえるこんな機会は貴重だった。

これは自分にとって……とても面白いことだった。

黒田真一は黒い瞳を細め、さらに、自分の心の中には悪趣味な考えがあった。もし西村絵里とこのように一緒に過ごせるなら、自分がまた怪我をして入院することになっても、心の中では喜んでいるだろう。

……

西村絵里は甘奈以外の人に食事を食べさせるのは初めてだった。甘奈に長い間食べさせていたので、動作はとても慣れていて、鶏の骨をきれいに取り除き、少しずつ黒田真一に食べさせ、男性が咀嚼するときに傷口を引っ張らないようにした。