第618章 第百三十二盗作か剽窃か1更(2)

だから、矢崎凌空は動揺した。

彼女の瞳は落ち着かず、どこを見ればいいのか分からなかった。

「私は……」

西村絵里は目を細め、矢崎凌空の言葉を濁す様子を見て、口元に嘲笑の色を浮かべた。

恐らく……これは背後の大ボスが用意した脚本なのだろう。

ただ……矢崎凌空というこの女優がこんなに舞台恐怖症だとは思わなかった。だから芝居が途中で演じられなくなりそうになっている。

会議室の他の社員たちは完全に首を伸ばして見守っていた……最初は矢崎凌空が非難の声を上げていたのに、あっという間に状況が一変した。

なんだか……西村絵里が矢崎凌空を圧倒しているような感じだ。

これは一体どういう状況なんだ？

皆は唖然として……西村絵里と矢崎凌空がいる方向を期待を込めて見つめた。言い争いや面子を潰すことは、常に女性たちが最も見たがることだった……

特に主管の座を巡る争いは、権力だけでなく、給料も関わってくる……

間違いなく見応えのある争いになるだろう。

村上秘書は静かに西村絵里に賛同の意を示した。さすが社長夫人だ、本当に威厳がある。

以前から西村絵里は豚を装った虎だと思っていた。そうでなければ、どうして黒田真一をあんなにも手玉に取れるだろうか？今日見て、確かに並外れた人物だと分かった。

……

矢崎凌空は深呼吸をした。周りの人々の指さす様子を聞きながら、顔は怒りで真っ赤になり、面目を失った……一瞬、頭に血が上り、前もって準備していた言葉を一気に全部吐き出した。

自分は……もうこんな状況になってしまった。

引き下がれない。

山口琴子の言う通りだ……

自分はもともと西村絵里を怒らせていたし、西村絵里は黒田奥さんだ。彼女は自分を許さないだろう。

だから……自分と山口琴子こそが同じ側にいるのだ。

そう思うと、矢崎凌空はいらだたしげに口を開いた。

「西村絵里……あなたの威圧感で私を脅すのはやめて。私は……怖がりじゃないわ。今日来たのは、証拠を持ってきたからよ。」

西村絵里は目を細めた……

この矢崎凌空、証拠を持ってくることまで知っているとは。

西村絵里は口元に嘲笑を浮かべ、矢崎凌空の言葉を聞いて、頷いた。

「いいわ、では……見せてもらおうか。」

数日前に自分のパソコンが壊れたことを思い出し……

西村絵里は心の中で不吉な予感がした。