社長室内。
ボスは少し人懐っこく、いたずら好きだが、確かに簡単に物を噛み裂くような犬ではなかった。
しかし村上念美は考え直してみた。ボスが突然興奮して、ドレスを噛み裂いたのは…おそらく偶然ではなく、意図的なものだったのだろう。
結局、藤原景裕はそんなにつまらない人間ではない。
結局、ボスを操れる人間は、藤原景裕以外にいないのだから。
……
手の中の小切手を握りしめながら、村上念美は藤原景裕が自分との関係をはっきりさせようとしていることを理解していた。
心が痛み、村上念美は目の前の美食を食べながら、自ら話題を変えた。
「そういえば、来春さん、大旦那様のお体の具合はいかがですか」
「大旦那様ですか、お体は悪くないですよ。ただ、若旦那が早く結婚することを望んでいらっしゃるだけです」