ブティック:
店員は最初から藤原景裕の顔立ちが気品高く、普通の人ではないと感じていた。男が大崎市唯一のブラックカードを取り出すのを見て、さらに緊張した。藤原さんの来店は本当に光栄なことだと思った。
村上念美は藤原景裕がカードを通したのを見て、唇を引き締めて言った。「藤原さん……」
「君は私の妻だ。私が買った服を着るのは当然のことだ」
村上念美がまだ言葉を言い終えないうちに、藤原景裕はすでに口を開いて遮った。村上念美は唇を噛んで、それ以上何も言わなかった。
うん、長年にわたって、藤原景裕は自分の気持ちをよく理解していた。
自分は男の前では透明人間のようだった。
……
村上念美と藤原景裕は店員の熱心な見送りを受けてブティックを出た。村上念美は車の中に座ってブティックを見つめ、少し感慨深げだった。
うーん、店の場所は元のままだけど、人はみんな変わっていた。
これでよかった。以前の人たちは自分と藤原景裕のことをみんな知っていたから。
結局、あの青春時代には、いつも制服を着て、ポニーテールの少女が軍服を着た少年の手を引いて店に入り、彼に自分のためにカードで支払わせていたのだから。
誰もが鮮明に覚えているだろう。
……
村上家:
藤原景裕の高級車が村上家の門前に停まった。村上念美は桜色の唇を引き締め、視線を隣の運転席にいる男に向け、少し緊張して不安そうだった。
主に自分と藤原景裕は今、表面上は夫婦でも心は離れ、他人同然だったからだ。
村上翔偉は自分と藤原景裕の関係が緊張していることを知っていたが、母の木下麻琳は知らないのだ。
村上念美は次女の村上安子と村上佑城のことで木下麻琳がすでに多くの心労を抱えていることを知っており、彼女にこれ以上自分のことで心配させたくなかった。
藤原景裕は村上念美が考え込んでいるのを見て、直接身を乗り出した。
村上念美は男が突然近づいてきたため、体が緊張した。
カチッ。
自分の横のシートベルトが外される音とともに、村上念美は少しほっとした。
藤原景裕は目の前の女性をさらりと見て、口を開いた。
「降りよう」
「はい」
村上念美は藤原景裕について車を降り、手のひらは緊張で少し汗ばんでいた。一方、藤原景裕は落ち着き払って、すでに自ら大きな手を伸ばして彼女の肩に置いていた。
村上念美:「……」