046 抱っこしてあげようか?

藤原家:

嫁さん……

村上念美の瞳が微かに動き、藤原景裕の心配そうな声が耳元に響いた。

「まだ歩ける?抱っこした方がいい?」

「い……いいえ、大丈夫です、歩けます。」

「うん。」

熊谷紗奈は腹立たしく思った。うまく計画していたのに村上念美に邪魔されてしまった。

「南町別荘と安藤家は同じ方向だから、景裕、ついでに安藤萱子を送ってあげて。女の子一人で帰るのは、母さんとしては心配で。」

村上念美:「……」

熊谷紗奈がここまで言うと、村上念美と藤原景裕は何も言い返せなかった。

村上念美は藤原景裕が眉をひそめるのを見て、彼の手の甲に自分の手を置き、静かに言った。

「うん、同じ方向なら一緒に行きましょう……安藤さんは今日お母さんを見舞いに来てくれたし、あなたの部下でもあるし。」

村上念美は明るく笑い、大局を見る人らしく、口元に薄い笑みを浮かべていた。

これはチャンスだ。

安藤萱子がどんな人物なのか、自分の目で確かめてみよう。

「わかった、車を取ってくる。」

「うん。」

……

藤原家の門で、藤原景裕が車庫に車を取りに行き、村上念美と安藤萱子の二人が門の前で待っていた。風が出てきたため、熊谷紗奈と藤原陽は大旦那様を支えてリビングに戻った。

村上念美は隣にいる安藤萱子が微かに震えているのを敏感に感じ取った。何か感情を抑えているようだった。

村上念美はうっすらと口角を上げた。

「村上お嬢様、おめでとうございます。藤原さんとお幸せな結婚をされて。」

村上念美はそれを聞いて頷き、女性の本心とは裏腹な言葉を聞きながら、安藤萱子の平然とした態度に感心した。

「ええ、ありがとう。」

「実は、私たち以前は同じ学校だったんです……私と藤原さんは同じクラスで、あなたは私たちの後輩だったんですよね。」

村上念美はずっと安藤萱子に見覚えがあると思っていた。なるほど、そういうことか。

「なんて偶然。」

「そうでしょう?あなたたちが一緒になって、本当に嬉しいわ。」

村上念美は安藤萱子の明るい笑顔を見ながら、なぜか心がドキリとした。

この安藤萱子、なかなかの手練れだ。

怒りで震えているのに、祝福の言葉を口にし、しかも顔には輝くような笑顔を浮かべている。

村上念美は美しい瞳を暗くし、なぜか急に恐ろしくなった。