045 先に私の妻と帰る

藤原家：

村上念美はときどきスマホの時間をちらりと見ながら、藤原家での時間が永遠に感じられた。

今や彼女は心配事が山積みで、一波が収まらぬうちに次の波が押し寄せていた。

藤原家が自分にどんな態度をとるのか分からない……

お腹の子供もまだ影も形もない。

村上氏にも多くの問題が山積みだ。

自分と藤原景裕は表面上は仲が良いように見せているが、村上念美は藤原家の人々に気づかれないか心配していた。

村上念美は口元に淡い笑みを浮かべ、大旦那様と一緒にリビングでテレビを見ながら、視線の端で遠くに高々と座る熊谷紗奈を見て、細い目を細めた。

彼女はかつて熊谷紗奈が藤原景裕の継母なのではないかと疑ったこともあった……

実際、人生にはそんなにドロドロした展開はないものだ。

村上念美は美しい瞳を暗くし、もし藤原景裕が熊谷紗奈が元凶だったことを知ったら、恐ろしい結果になるだろうと思った。

ただ彼女は切実に知りたかった、なぜ熊谷紗奈はそんなことをしたのか？

……

夕食会が始まろうとしたとき、藤原家に招かれざる客が訪れた。

「萱子、あなたったら、来るだけでいいのに、何か持ってきたの？」

熊谷紗奈は安藤萱子が来たのを見て、親しげに挨拶した。

「おじさま、おばさま、大旦那様……」

安藤萱子はロングドレスを着て、とても淑女らしく見え、笑顔も上品だった。

村上念美：「……」

見覚えがある。

村上念美は少し考えて、すぐに安藤萱子の身分を思い出した。

藤原景裕の秘書だ……

彼女が一人で来たのはどういうことだろう？

村上念美は美しい瞳を見開き、隣の藤原景裕を見た。藤原景裕は特に感情の変化を見せなかった。

「藤原社長……」

安藤萱子は藤原大旦那様、熊谷紗奈、藤原陽の顔を見回した後、藤原景裕に視線を落とし、嬉しそうな表情を浮かべた。

村上念美は目を細めた。まず藤原家の人々に挨拶し、その後で藤原景裕に……

どうやら安藤萱子は藤原家を訪問するために来たのであり、会社の用事で藤原景裕を探しに来たわけではないようだ。

安藤萱子は藤原景裕の隣にいる村上念美に視線を固定し、表情が少し変わった後、上品な笑顔で積極的に挨拶した。

「村上お嬢様、こんにちは」

「こんにちは」