052 道端の人は玉のごとく、公子は世に二つとなし

村上念美は車を運転して空港に急いだ。木村陽太はすでに長い間待っていた。

「念美、久しぶり」

背筋をピンと伸ばし、青いスーツをきちんと着こなし、凛々しく端正で、温和な玉のような雰囲気を漂わせていた。

村上念美は口角を上げた。木村陽太の唇の端には常に春風のように明るい微笑みが浮かんでいて、人を心地よい気分にさせた。

男性の声はたいてい優しく厚みがあり、安心感を与えてくれる。

「道行く人は玉のごとく、この世に並ぶ者なき公子なり」

木村陽太を見ると、村上念美の頭にはいつもこの言葉が浮かんだ。

言ってみれば、木村陽太の性格と藤原景裕は正反対だった。

時々、村上念美は不思議に思った。木村陽太のような温和で上品な人がどうして藤原景裕のような冷たく雪のような人と付き合い、親友になれたのだろうか。