藤原氏:
レイアが村上念美にぬるま湯を注ぎながら、好奇心を持って尋ねた。「村上社長、工商局の件が解決すると予測されていたから、前もって売上を伸ばしていたのですか?」
「うん、偽物は百倍の罰金...工商局に目をつけられたら、強い者でも皮一枚剥がされる。外で買い込んだ人たちもそう考えていたんだろうね」
だから...これは窮地に追い込まれて生まれ変わるということなのだろうか。
彼らの「偽物は百倍の罰金」という心理を利用して、心理戦を仕掛けたのだ。
村上念美は湯飲みを持ち上げて一口すすり、喉を潤した。
レイアは心の底から村上念美を尊敬していた。まだ若いのに、とても聡明で、決断力があり手際がいい。
「レイア、工商局の後続の件を処理してくれないか...何かあったらすぐに電話してね。それと、木下主任は会社の古株だから、きれいに辞めないかもしれない。引き継ぎの件も見ておいて」
「わかりました」
……
昼時、来春さんが村上氏に昼食を届けに来た時、ついでに念美に夕方藤原家で食事をする件を伝えた。
熊谷紗奈が手配したと言うことで、念美は少し頭が痛くなった。
はっきりと断るのは良くないが、藤原家に行くのは...心が疲れる。
村上念美は頷いて承諾したが、なぜか心の底に不安が残っていた。
結局、熊谷紗奈は...自分を極度に嫌っているのだから。
……
村上念美が車で藤原家に着くと、来春さんが熱心に迎えた。「念美ちゃん、来たのね」
「来春さん、こんにちは。景裕は?」
「若旦那様はまだ到着していません...」
「そう」
村上念美は来春さんと簡単に挨拶を交わした後、リビングに入った。藤原景裕がまだ到着していないと知り、少し不安を感じた。
「お父さん、お母さん、おじいさま...」
リビングに入ると、藤原大旦那様と藤原陽、熊谷紗奈がソファに座っているのが見えた。念美は口元に微笑みを浮かべ、礼儀正しく挨拶した。
村上念美は細い目を少し細め、ソファに座る三人に視線を走らせ、考え込んだ。工商局の件は解決したが、問題が生じた。
悪さをした人物は藤原家に絞られるが、この三人のうち誰なのかはまだわからない。
もっとも、八割方の可能性で熊谷紗奈だろうが。
「うん、座りなさい」