救急室に入ると、村上念美はすぐに携帯を取り出し、以前自分に偽の妊娠証明書を作ってくれた主任医師に電話をかけた。
簡単に用件を説明すると、主治医は少し躊躇した後、村上念美に隣にいる救急医に電話を渡すよう合図した。
村上念美は内心ほっとした。藤原景裕が自分を市立人民病院に連れてきてくれて良かった。
もし別の病院だったら、また新たに関係を築かなければならなかっただろう。
……
流産を装うため、医師は村上念美に栄養補給の点滴を見せかけで取り付け、ついでに彼女の外傷を丁寧に検査した。
簡単な擦り傷だけで、大した問題はなかった。
「村上お嬢様、検査結果を藤原さんにお伝えしてもよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします。」
……
藤原大旦那様は村上念美の妊娠を知るとすぐに病院に駆けつけた。