063 藤原景裕は私の男

「木村陽太兄さん、私は大丈夫よ、ただの事故だから」

村上念美は淡い笑みを浮かべながら、視線は木村陽太と藤原景裕の間に落ちていた。

二人の男性が書斎で何を話していたのか、知る由もない。

木村陽太はうなずいたが、どうして事故なものか、明らかに人災だ。

……

「お爺さま、お父さん、お母さん……ごめんなさい、ご心配をおかけして」

村上念美は言葉遣いが温和で、素直で思いやりがあった。結局のところ……自分の立場をわきまえなければならない。

藤原家の人は自分を快く思っていないのだから。

今や子供が「いなくなった」ことで、自分は完全に保護傘を失ったも同然だ。

軍人との結婚という一枚の婚姻届だけが、関係を維持しているに過ぎない。

今は藤原家の人と衝突する時ではない。

「ゆっくり休みなさい、子供はいなくなったけど、また作ればいい」