「木村陽太兄さん、私は大丈夫よ、ただの事故だから」
村上念美は淡い笑みを浮かべながら、視線は木村陽太と藤原景裕の間に落ちていた。
二人の男性が書斎で何を話していたのか、知る由もない。
木村陽太はうなずいたが、どうして事故なものか、明らかに人災だ。
……
「お爺さま、お父さん、お母さん……ごめんなさい、ご心配をおかけして」
村上念美は言葉遣いが温和で、素直で思いやりがあった。結局のところ……自分の立場をわきまえなければならない。
藤原家の人は自分を快く思っていないのだから。
今や子供が「いなくなった」ことで、自分は完全に保護傘を失ったも同然だ。
軍人との結婚という一枚の婚姻届だけが、関係を維持しているに過ぎない。
今は藤原家の人と衝突する時ではない。
「ゆっくり休みなさい、子供はいなくなったけど、また作ればいい」