064 藤原景裕は村上念美のもの【回想シーン】

村上念美は階段を上がり、病室に戻ろうとしたとき、藤原景裕の長身が入り口に立っているのを見た。鋭い黒い瞳は、すでにすべてを見通していた。

藤原景裕の視線が村上念美に落ち、さらに念美の後ろにいる安藤萱子を一瞥すると、薄い唇を引き締めた。

村上念美:「……」

まずい。

良い噂は広がらないが、悪い噂は千里を走る。

自分のわがままな一面がまた藤原景裕に見られてしまった。

本当に、おとなしく振る舞おうと思っていたのに。

……

安藤萱子は藤原景裕が来たのを見て、表情を明るくし、自分の惨めな姿も気にせず、急いでよろめきながら階段を上ってきた。

「藤原さん、念美のことを怒らないでください。念美は子供を失って、とても悲しんでいるから、手を出してしまったんです。」

村上念美:「……」

こんな時でもまだ偽装するなんて、本当に偽物だ。

藤原景裕は表情を変えず、視線を村上念美の柔らかく白い小さな顔に落とし、安藤萱子のたわごとには反応せず、ゆっくりと口を開いた。

「さっき君は、俺が君の男だと言ったのか?」

村上念美:「……」

安藤萱子の前でかっこつけたつもりが、藤原景裕に現行犯で捕まってしまった。

村上念美は美しい瞳を伏せ、安藤萱子の前で気勢を失いたくなかったので、静かに言った:「そうですよ、藤原さんは藤原奥様のものではないですか?」

藤原景裕はこの言葉を聞いて、もともと無表情だった顔がさらに冷たくなり、全体の雰囲気も冷酷になった。

村上念美は藤原景裕の感情を読み取れず、静かに言った:「私は先に病室に戻ります。」

「ああ。」

藤原景裕の黒い瞳は逃げる女性の背中に落ち、思考は少し散漫になった。

村上念美が中学一年生の時、自分を振り向かせると宣言し、忙しい一学期を過ごしても何の進展もなかった後、あるスポーツ大会で。

村上念美は歯を食いしばって1500メートル走を完走し、一位を獲得して議長台で勝利のスピーチをした。

「中学一年七組の村上念美さん、どうやってゴールまで走り切ることができたのですか?」

「私は……みなさんに一つお知らせしたいことがあります。」

長距離走を終えたばかりで、村上念美はまだ息が上がっていて、美しい髪は汗で濡れ、小さな顔は赤く染まり、とても愛らしかった。

「高校部の藤原景裕さんは、私、村上念美の男です!」