069 藤原さんは藤原・ケチ【お気に入り登録お願いします】

南町別荘：

手首が男に握られて少し痛かった。村上念美は藤原景裕が冷たい表情をしているのを見て、正直に話すことにした。

「安藤家の人にあなたを気にかけさせたくなかったの。面倒なことが増えるのを避けたくて。また誰かに階段から突き落とされたら大変だから」

藤原景裕は女性が自分の表情を慎重に窺っているのを見て、心に痛みを感じた。彼女の前では、いつも自分の感情をコントロールできなかった。

「ああ」

藤原景裕が自分の手首を掴んでいた大きな手を引っ込め、表情が和らいだのを見て、村上念美は礼儀正しく言った。「藤原さん、さっきはありがとうございました。あなたがいなければ、安藤家もあんなに簡単に1億の投資を出してくれなかったでしょう」

「藤原さん」という一言で、藤原景裕の先ほど和らいだ表情が再び険しくなった。

自分に利用価値があるときは、彼女は親しげに「景裕」と呼んでいた。

今日に至っては「旦那様」とまで呼んだ。

今、人が去り、自分に利用価値がなくなると、彼女は距離を置いて「藤原さん」と呼ぶ。

藤原景裕は冷たい表情で、すぐに口では心と違うことを言った。

「勘違いするな。私はお前を助けるためにやったわけじゃない」

え？

村上念美は美しい瞳を見開き、藤原景裕の言葉の意味が理解できなかった。

「覚えておけ、あの1億は私が7でお前が3だ。お前は3000万だけもらえる。安藤家が後から追加した7000万は私のものだ」

何？

「安藤氏の財務が村上氏に資金を送金する時、私は直接人を手配して7000万を抜き取らせる」

はぁ？

村上念美は呆然とした。

「どうした、私の言ったことに問題でもあるのか？」

さっきまで嬉しそうだった小さな顔が、一瞬で崩れ落ちた。まるで天にも届くような不満を抱えたかのように。藤原景裕の村上念美をからかう興味もさらに強くなった。

女性が見せかけで自分を「藤原さん」と呼ぶよりも、女性の表情が変わりやすいのを見る方が楽しかった。晴れから曇りへ、しょんぼりした小さな顔。

「いいえ...藤原さん、あなたは英明で神のように賢く、決断力も素晴らしい。私はあなたに全面的に頼っています...」

くそっ、藤原・ケチめ。

こんなに黒い...。

村上氏は安藤氏から3000万を騙し取ったとはいえ、少なくとも形だけでも筋を通した。