景山瑞樹は図らずも、村上念美が熊谷紗奈と安藤萱子を苦しめるのを手伝ってしまった。景山瑞樹が3年前の出来事の首謀者だったと聞いて、熊谷紗奈は怒りで鼻から煙が出そうだった。
「お義母さん、行きましょう。もしお体を壊されたら、元も子もありません」
安藤萱子の言葉は熊谷紗奈に引き下がる余地を与え、あまりにも見苦しい思いをせずに済んだ。
「村上念美、覚えておきなさい」
去り際に、熊谷紗奈は思わず捨て台詞を吐いた。念美は口元をゆがめた。ちょうど良かった、もう脅し文句を聞いて怖がる年齢は過ぎていた。
……
熊谷紗奈と安藤萱子が去った後、念美は頭が痛くなった。熊谷紗奈の性格からして、きっと藤原氏に行って藤原景裕の前で大げさに話を作り上げるだろう。
念美は振り返り、目の前の妖艶で魅惑的な男を見つめ、ソファに座ると不機嫌そうに言った。「あなたに感謝なんてしないわよ……景山瑞樹、あなたは私に大きな問題を引き起こしたのよ」
クソッ。
本当に善意が仇になるとはこのこと。
「俺がいなかったら、さっきはあの二人にひどい目に遭わされていたぞ」
念美は手を上げて不機嫌そうに男の額の包帯を引きはがし、嫌そうに言った。「あなたには関係ないわ。ここで弱々しい演技はやめて、出て行って。さもないと明日にでもレイアに男性科の医者を景山家に連れて行かせるわよ。それに、景山瑞樹、景山家の人々があなたが既婚女性の私にしつこく付きまとっていることを知ったら、どうなるか、あなたはよく分かっているでしょう」
景山瑞樹:「……」
やはり骨折り損のくたびれ儲け。
女は口が達者で……
実際、さっきも自分があの二人の女を追い払う必要はなかった。彼女は自分で屈辱を受けることはないだろう。
「俺について来い」
念美:「……」
どういう意味?
念美の手首は景山瑞樹にしっかりと掴まれ、その後、男の力強い腕に引かれてエレベーターの方向へ向かった。
ここは村上氏なので、引っ張り合いは見苦しい。
念美は素早く景山瑞樹の腕を振り払った。レイアは他のスタッフに素早く自分のオフィスに戻るよう合図し、人々を散らした。
「景山瑞樹、何をするつもり?」
「お前を景山家に連れて行って、実際の行動で示してやる。俺は天下の大罪を犯す勇気がある。これからは堂々とお前に付きまとう、既婚女性に付きまとうんだ」