087 彼に行ってほしくない、彼に付き添ってほしい【初回購入お願いします】_2

ただ...自分はもうこんなに長い間待ってきたのに、どうして今のこの数日間に執着してしまうのだろう。

...

藤原景裕は心の奥底にある焦りを必死に抑え、薄い唇を引き締め、声は掠れながらも魅力的だった。「先に出ていくよ、気をつけて。足首はもう痛くないだろうけど、まだ青あざは消えていないから」

「あ...はい」

村上念美は少し呆然としながら、頷いて、藤原景裕が身を翻して歩き出そうとするのを見て、悪魔に取り憑かれたかのように小さな手を伸ばして男の大きな手を掴んだ。

女性の白く柔らかな手のひらには、先ほど爪が食い込んだせいで、まだ血の跡が残っていた。

女性の小さな手はとても柔らかく、藤原景裕は村上念美が突然手を伸ばした動作に、喉仏が数回上下した。

「ありがとう」

先ほど怒らなかったこと、自分を強制しなかったことに感謝していた。村上念美は、自分が男の威厳と自尊心に挑戦したことを知っていた。藤原景裕は熱い視線で女性の小さな手をじっと見つめ、しばらくしてから唇を引き締めた。