087 彼に行ってほしくない、彼に付き添ってほしい【初回購入お願いします】_2

ただ...自分はもうこんなに長い間待ってきたのに、どうして今のこの数日間に執着してしまうのだろう。

...

藤原景裕は心の奥底にある焦りを必死に抑え、薄い唇を引き締め、声は掠れながらも魅力的だった。「先に出ていくよ、気をつけて。足首はもう痛くないだろうけど、まだ青あざは消えていないから」

「あ...はい」

村上念美は少し呆然としながら、頷いて、藤原景裕が身を翻して歩き出そうとするのを見て、悪魔に取り憑かれたかのように小さな手を伸ばして男の大きな手を掴んだ。

女性の白く柔らかな手のひらには、先ほど爪が食い込んだせいで、まだ血の跡が残っていた。

女性の小さな手はとても柔らかく、藤原景裕は村上念美が突然手を伸ばした動作に、喉仏が数回上下した。

「ありがとう」

先ほど怒らなかったこと、自分を強制しなかったことに感謝していた。村上念美は、自分が男の威厳と自尊心に挑戦したことを知っていた。藤原景裕は熱い視線で女性の小さな手をじっと見つめ、しばらくしてから唇を引き締めた。

「うん」

...

藤原景裕が去った後、村上念美の張り詰めていた糸は一気に切れた。深呼吸をして、村上念美は服を脱ぎ終わるとバスタブに座り込み、深呼吸をして呼吸を整えた。

危機一髪...九死に一生を得た?これからどうすればいいの?

村上念美は自分と藤原景裕の関係が和らいでいることを感じることができたが、同時に自分の心理的な拒絶によって、二人が行き詰まりに向かっていることも感じていた。

睡眠薬...村上念美は美しい瞳を暗くした。今、自分が思いつくのは、この三文字だけだった。

リハビリ治療については、すでにシアトルで3年間行ってきた。改善はあったものの、完全な回復にはまだ程遠かった...

...

お風呂から出た後、村上念美は寝室に男の姿がもうないことに気づいた。村上念美は美しい眉を寄せ、下の階のキッチンから音が聞こえてきたので、急いでキッチンへ向かった。階下に着くと、村上念美は藤原景裕がキッチンで忙しそうに、手慣れた様子で料理をしているのを見た。

「シーフードのお粥を作ったんだ。一緒に食べる?」

藤原景裕は背後から女性の足音を聞いて、口角を上げ、振り返って村上念美を見つめながら尋ねた。

「食べる...」