「一緒に行くよ。」
「うん。」
村上念美は鼻をくんくんさせ、心の中で信じられないほど温かくなった。男性に甘やかされるというのは、こんなにも幸せな味わいなのだろう。
おそらく、昨夜は二人にとって突破口だったのだろう。二人は膠着状態を打破し、関係は一歩一歩と静かに近づいていた。
...
景山家:
景山大旦那様は村上念美への電話を切り、酔いつぶれて意識のない景山瑞樹を見て、目を細めて言った。
「酔っ払っている以外に問題はあるのか?」
景山家の専属医師である田中医師は大旦那様のこの言葉を聞いて、すぐに口を開いた。「問題ありません、大旦那様。景山様はただ酔っているだけで、意識がやや朦朧としているだけです...」
「ふむ、熱は出ていないのか?」
「えっと...それは全くありません。」
田中医師は期待に満ちた様子の景山大旦那様を見て、とても驚いた。
この大旦那様はなぜ突然、孫が熱を出すことを望んでいるのだろう?
「これは困ったな...執事、こっちに来なさい。」
景山大旦那様は手を上げて執事を呼び寄せ、それから咳払いをした。
「人を手配して彼をバスルームに連れて行き、冷水シャワーを浴びさせなさい...そして、熱が出て風邪をひき、体温が正常でなくなったら、ベッドに戻しなさい。ただし、やりすぎて肺炎や命に関わるようなことにはならないようにな。」
執事:「...」
何だって?
執事は完全に呆然としていて、自分が聞き間違えたのではないかと思った。
大旦那様は冗談を言っているのだろうか?
何の問題もないのに、わざわざ景山瑞樹を病気にさせようとしているなんて。
...
執事が躊躇しているのを見て、景山大旦那様はすぐに叱責した。「何をぼんやりしているんだ、念美がもうすぐ戻ってくるぞ...時間がないんだ。」
「は...はい...」
執事は怠ることができず、すぐに人を手配して、まだ酔っ払って朦朧としている景山瑞樹をバスルームに引きずり込み、冷水で洗い流した。
景山瑞樹は眉をひそめて不快そうに抵抗していた。大旦那様は心中穏やかではなかったが、それでも心を鬼にする必要があった。
これは良いチャンスだ。
いわゆる孫の嫁を守る戦いとは...条件を作り出すことだ。